検査値ディクショナリー59Emer-Log 2021 春季増刊BUN(尿素窒素)基準値・病態識別値・パニック値 基準値:8~20 mg/dL検査でわかること BUN(尿素窒素)は血中の尿素に含有される窒素量を表すものである。尿素は腎臓から排泄されるため、主に腎機能の評価に用いられる。適応と検査のタイミング 腎機能障害のある患者で、摂取タンパク量の評価、体液量の評価を行うときに測定する。救急ではこう使う! Cr(クレアチニン)値とともに測定し、BUN/Cr比を用いることで腎機能障害のみならず、消化管出血や脱水症の予測を行い、補液などの治療適応を考慮する。臨床的意義 アミノ酸代謝の過程や腸内細菌叢からの生成によって生じた有害なアンモニアが、肝臓の尿素回路で尿素に変換され、腎臓から排泄される。腎機能障害では排泄障害、肝障害では合成障害、摂取タンパク量の増加や異化亢進が検査値に影響する。あわせて必要なほかの検査 Cr、肝酵素、総蛋白やアルブミンなどをあわせて検査する。異常を示す主な疾患 BUN/Cr比を用いて疾患の予測が可能である(表1)2)。検査値の解釈で注意すべきこと 前述の通り、BUN値の異常のみでは腎機能障害の評価には不十分である。他の検査とあわせて総合的に評価する。引用・参考文献 1) 宮川太郎ほか.クレアチニン,クレアチン.Medicina.52(4),2015,183. 2) 孫大輔ほか.BUN,クレアチニン高値を認めたときの鑑別診断の進め方.日本内科学会雑誌.97(5),2008,930‒33.表1 BUN/Cr比から予測できる疾患(文献2を参考に作成)BUN/Cr比>10~20脱水、心不全、出血性ショック、高タンパク食、消化管出血、異化亢進BUN/Cr比<10多尿、妊娠、肝不全、低タンパク食
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