特別 webインタビュー2透析ケア 2021 vol.27 no.6 (509) 13厚生労働省の発表によると、透析患者は新型コロナウイルス感染症に罹患した場合に「原則入院」となっています。そのことも踏まえて医療体制の現状を教えてください。 まず新型コロナウイルス感染症に感染した透析患者数について申しますと、2021年に入って約2ヵ月間で2020年の罹患者と同じ数に達しています。これは透析患者のなかで特徴的に感染者が増えたというより、市中感染により一般の人が感染してから1週間ぐらいのタイムラグを経て、透析患者にも影響が出た形です。これまで、感染者数の増加時期に3つの波(2020年3月下旬~、同年7月上旬~、2020年11月下旬~)がありましたが、第3波はとくに大きく、すこし落ち着いてきたときでも第2波ぐらいの規模がありました。実際には、人々が日々の感染者数に慣れてきており、そういう事実にも気づきにくくなっていますね。 第3波の感染者数の増加は、2020年の11月下旬からはじまり、今年1月に入ってからさらに増えました。2021年1月8日に緊急事態宣言が出たことは、とくに印象深かったのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症の感染者(以下、感染者)が増大したことにより、南関東では東京・神奈川・埼玉の病床がいっぱいになり、大阪や福岡なども同様の状況でした。その結果、「透析患者は全例入院」という原則が守れなくなり、外来透析を1~2回しながら入院病床の空きを待つという状況が生じました。1月下旬から2月上旬には、この状況も大部分の地域で解消されました。 一般人口の市中感染の減少に伴い透析患者の感染者数も減ってはいますが、代わって主要都市のクラスターが目立ってきています。長期入院施設や高齢者施設で20人規模のクラスターが発生しており、今度はそういう人々の入院手配に追われている状況です。 東京都全体では、透析患者の入院受け入れ病全国的な透析施設の現状? 日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会 新型コロナウイルス感染対策合同委員会では、透析医療の確保や透析室でのクラスター発生防止、感染者数の集計・現状把握など、新型コロナウイルス感染症による医療体制の混乱や崩壊を食い止めるための活動を行っている。同委員会の委員長を務め、現在の透析医療における新型コロナウイルス感染対策の最前線に立っているのが菊地勘先生だ。1都3県に緊急事態宣言が発出されている最中の2021年3月中旬、新型コロナウイルス感染症が流行しはじめてから現在に至るまでの透析医療をふり返りながら、全国の透析室の当時の状況や現状、そして今後について菊地先生に話を伺った。(取材・構成・編集:透析ケア編集室/ライター:難波安衣子)
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