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はじめに 本邦では2020年2月より、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019;COVID—19)の流行がはじまりました。COVID—19陽性者を母数とした、2021年3月3日時点のCOVID—19における国内全体の死亡率は1.7%、70歳代で5.2%、80歳以上で13.6%ですが、透析患者の場合は全体で13.0%、70歳代で18.3%、80歳以上で25.1%と非常に高いです1、2)。透析患者では、転帰の確定した症例を追うことができるので、転帰の確定した症例を母数とした場合では、COVID—19感染者における死亡率は全体で27.8%、70歳代で37.7%、80歳以上で50.0%と、異様に高い値となります1)。 当院は神奈川県にある患者数約120例の、建屋が独立した無床外来維持血液透析クリニックです。2020年4月下旬に、通院中の血液透析患者1例がCOVID—19を発症しましたが、施設内でのほかの患者・スタッフへの二次感染を防止しえた事例を経験しました。この事例は韓国からの報告と合わせて、マスクと手洗いなどの学会指針に従った感染防御対策の有用性を示すエビデンスとして、日本透析医学会雑誌に速報で揭載されました3)。その内容をここに解説し、さらに、現在のCOVID—19の恐るべき透析患者の死亡率に対する、ワクチン接種までのつなぎの治療の可能性について、若干の考察と一縷の光明となる情報を加えます。当院における感染対策の現状1.患者指導と対策 当院は以前から患者に対して季節に関係なく透析室内でマスクをすることを徹底していましたが、2020年2月4日、日本透析医会からの『新型コロナウイルス関連肺炎に対する透析施設での対応について(第1報)』4)が発表され、それを参考に当院の対応を再考しました。患者に対しては、①来院前に検温をし、発熱や呼吸器症状のあるときは電話連絡することを再確認しました。また、②透析室入室前に流水と石けんでの手洗いの徹底、車いすなどで手洗いができない患者については、手指消毒用のアルコール製剤をつねに使用できるよう、設置場所を増やしました。そして、透析の送迎車は多人数の乗り合いになることから、③マスクは家から装着するよう変更しました。また、④透析室内の換気は1時間あたり最低10分程度とし、⑤通院の送迎車両については、窓を4分の1程度開けSpecial Edition浦うらべ・しゅんいちろう辺俊一郎 倉田会えいじんクリニック臨床工学部 松まつざわ・しょうへい沢翔平 同 加かとう・あきら藤亜輝良 同飛ひだ・みほ田美穂 倉田会くらた病院腎臓内科 兵ひょうどう・とうる藤透 倉田会本部 (透析患者のCOVID—19重症化移行を阻止するためのワーキンググループ)透析施設の現状報告と課題、 一いち縷るの光明226 (522) 透析ケア 2021 vol.27 no.6

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