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134 透析ケア 2021 夏季増刊リンは、骨格の形成やエネルギー代謝にかかわる必須の栄養素です。透析患者は血清リン濃度が高くなりやすく、高リン血症は血管石灰化による動脈硬化や骨の脆弱化をひき起こす可能性があるため、リン制限が必要です。リンは生命維持にかかわる必須の栄養素 リンはカルシウムの次に体内に多く存在するミネラルです。成人の体内には最大850gのリンが存在し、その約85%が骨組織に、約14%が軟組織や細胞膜に、1%が細胞外液に存在します1)。リンの体内でのはたらきは、①カルシウムとともに骨や歯を形成する、②高エネルギーリン酸化合物のアデノシン三リン酸(ATP)としてエネルギー代謝に関与する、③核酸や細胞膜の構成成分となる、④神経伝達物質の材料になるなどがあり、生命維持にかかわる必須の栄養素です。リンは排泄や再吸収によってバランスがとられる 食事中のリンは腸管から吸収され、吸収されなかった分は糞便中に排泄されます。吸収されたリンは骨や細胞内外に移行して、骨の形成などさまざまな役割を果たします。そして腸管から吸収された正味の量(吸収量-分泌量)と同等のリンが腎臓から排泄されます。健常者の血清リン濃度の基準範囲は2.5〜4.5mg/dLで、腸管からの吸収、骨や細胞内外への移行、腎臓での排泄や再吸収によってバランスがとられ、これらは副甲状腺ホルモン(PTH)や線維芽細胞増殖因子23(FGF 23)、活性型ビタミンDなどによって調節されています1)。健常者の場合、リンの1日の摂取目安量は18歳以上男性で1,000mg、女性で800mgですが1)、国民健康・栄養調査によると、摂取量は20歳以上の中央値で1日969mg2)です。しかし、この調査には加工食品に添加されているリンは含まれていないため、実際の量はこの値より多いことも考えられます。リンは多くの食品に含まれていて、通常の食事で不足・欠乏することはありません。透析患者にはリン制限が必要 維持透析患者では腎機能が廃絶しているため、リンの排泄は透析による除去に依存します。一般的に1回4時間の透析で約1,000mgのリンって何? 透析患者はどうしてリン制限が必要なの?4646

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