透析ケア 2021 夏季増刊 135リンが除去されるため、週3回での除去量は約3,000mgです。このような標準的な透析だけではリンの除去量には限界があるため、患者は高リン血症になります(図)。高リン血症は自覚症状がなく、すぐに症状が出るわけでもありません。しかし、長期的にみると血管石灰化による動脈硬化や心不全、骨の脆弱化、関節炎、かゆみなどにより生命予後の悪化やQOLの低下を招く可能性があるため、リンの摂取量を制限する必要があります。透析患者の血清リン濃度の管理目標値は3.5〜6.0mg/dLです3)。食事以外の原因でも高リン血症は起こる 高リン血症の原因は食事だけではありません。食事以外でも透析不足、リン吸着薬不足、服薬タイミングのずれ、二次性副甲状腺機能亢進症などさまざまあります。患者個々において高リン血症の原因を評価し、それに合わせた対応をすることが重要です。1)厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書.2014,440p.2)厚生労働省.“栄養素等摂取状況調査の結果”.令和元年国民健康・栄養調査報告.2019,68-111,(http://www.mhlw.go.jp/content/000711006.pdf,2021年4月閲覧).3)日本透析医学会.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン.日本透析医学会雑誌.45(4),2012,301-56.清永会矢吹病院健康栄養科科長中嶌美佳(なかじま・みか)食事1,000mg800mg150mg腸管便1日350mg尿1日650mg血液透析1回4時間・週3回リンの除去量1回1,000mg、週3回では3,000mg。1日あたり約420mgの除去。細胞外リンプール腸管から吸収された正味の量(吸収量-分泌量)に対して、1回4時間・週3回の標準的な透析では、1日あたり230mgの組織沈着が起こる(650mg-420mg=230mg)。図 維持血液透析患者におけるリンの出納第4章 栄 養
元のページ ../index.html#15