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手術の前の心構え01皆さんは手術の前にどんな気持ちになりますか?緊張と不安で足がガクガクと震えますか?それとも、アドレナリンが出て目が血走りますか?平常心、無我の境地で心静かにその時を迎えますか?「熟練の外科医になれば、緊張などせずに平常心で手術に臨める」「1日も早くそうなりたい」、と願っている先生も多いと思います。でも、熟練すれば本当にそのような境地に至り、自然と平常心で手術に臨めるのでしょうか。そのような達人も世の中には存在するのでしょうが、その達人には達人なりに、そこに至るまでのプロセスがあり、手術までの準備、気配り、心のもって行き方などがルーティンワークとして、今や達人のなかに完璧に刷り込まれているから達人たりえているのだと思うのです。私自身、今も手術に際しては不安で一杯で、達人の境地ははるか向こうにかすんで見えません。いつまでこの修行が続くのだろうと、自分の肝の小ささに嫌気が差したこともあります。そんなころ、大変ご高名な外科医がこのようにお話しされているのを拝聴し、何か霧が晴れるような気がしました。“外科医が不安を覚えるのはよいことだ。不安を感じるからこそ、入念に準備をするからだ”・神波大己 Tomomi Kamba熊本大学大学院生命科学研究部 泌尿器科学講座 教授chapter 1 手術のまえに6 (168 ) 2021 vol.26 no.02

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