130122102
7/8

特集 経尿道的手術と術前術後管理 ―心構えから手技まで―さて、私たち外科医は一体何が不安なのでしょうか。人間は一人ひとりが個性的で、まったく同じということはまずあり得ません。車を組み立てるように、どの工程も寸分の狂いもなくオートマチックに進めることなどできないのです。そのような個人差を前に何とも言えない不安を覚え、それに備えようと努力するのかもしれません。・この患者さんの現在の状態は、この手術に耐え得るものだろうか?・この患者さんの病態は、この術式が最も適しているのだろうか?・この患者さんにはこの術式が最適として、何か特異的な体格上の問題、過去の手術歴、解剖学的バリエーションを見落としていないだろうか?・手術に必要な道具は、トラブルシュートに必要なものも含め揃っているだろうか?・手術に使用する機器の特性を理解して、うまく使いこなせるだろうか?・手術自体はうまくいったとして、術後の回復をつつがなく進めるために必要な指示は出せているだろうか?周術期の対応を要する併存症、対応が必要な薬物、手術歴、過去の術創、砕石位を含め体位の可否、腰椎麻酔・全身麻酔の可否、画像評価、手術に必要な道具の確認とオーダー等々、考えてみると、手術の準備は外来で患者さんを初めて診察するときから始まると言っても過言ではなさそうです。完全に不安を払拭することはまず不可能ですし、払拭する必要もありません。でも、自分なりのチェックリストを想定し、一つずつクリアにしていくことで手術に対する不安を最小化することは可能です。このように術前準備を繰り返し行っていると、自然と体に刷り込まれていくことでしょう。そして副産物として、その手術自体の本質的な理解もさらに深まり、画像をみる際のポイントなどの考察も洗練されていくものと思います。考察が洗練されれば準備も洗練され、手術の理解もさらに深まり、不安がもっと最小化されていく、そのような正のサイクルに入ればしめたものです! 2021 vol.26 no.02 (169 ) 7

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る