編者のことば 脊椎の手術は一見複雑ですが、神経組織への圧迫を取り除く除圧、上下の脊椎骨を癒合させる固定、曲りを治す矯正の組み合わせで構成されています。これがわかれば、内容を理解することはそれほど難しくありません。ただ、どのような手術であっても術後管理がたいへん重要で、最終的な成績に大きく影響します。 手術後の合併症のなかでは、術後血腫は再手術のタイミングを逸すると永続的な障害を残すことになるので、麻痺悪化の早期発見が重要です。麻痺の有無のチェックには、術者や病棟医だけでなく受け持ち看護師も大きな役割を担います。異常を遅滞なく察知し、医師に連絡することが大切です。また、術後の安静度や装具の管理も看護師の力が大きく発揮される点です。 こうした力はベッドサイドで気を付けていれば自然と身に付くわけではありません。解剖学と神経診察の基本を身に付け、患者さんの術前の症状を把握し、手術の内容を理解することで、適切な視点を持つことができるようになります。 本書では、脊椎の解剖や神経学の基本から、病態や手術まで大変詳しく述べられ、豊富な図表で具体的に示されています。難易度としては整形外科専門医を目指す専攻医にも十分なくらいで、すべてを理解しマスターすれば、脊椎外科看護のエキスパートになれることは間違いありません。第2版として刊行するにあたり、とくに看護領域が大きく書き換えられました。本書がチーム医療を実践し、患者さんに安心して手術を受けてもらえる医療人養成の一助になれば幸いです。 東京医科歯科大学大学院整形外科学 教授 大川 淳
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