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1.心不全発症リスクが高い糖尿病患者 糖尿病と心不全は密接に関係しています。糖尿病は、虚血性心疾患をひき起こすもっとも強力なリスク因子であり、糖尿病患者は心不全の発症リスクが高いことが知られています。また、心不全患者においては、20〜30%が糖尿病を合併しているといわれています。糖尿病患者における血糖コントロールの指標であるHbAlcの上昇は、心不全による入院や死亡のリスク上昇と関係することも報告されています1)。2.糖尿病性細小血管症の影響 心不全は左室駆出率(left ventricular ejection fraction;LVEF)を基準に分類されます(表1)。心不全患者の高齢化に伴い、LVEFが50%以上の「心機能の保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction;HFpEF)」が増加しています。HFpEFの病態の中心は左心室の拡張機能障害です。一方で、糖尿病による細小血管症によっても、心筋障害の初期には拡張障害が生じます。HFpEF患者は、心機能の低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction;HFrEF)患者と比較し、糖尿病による心不全再入院など予後への影響が大きいと報告されています2)。したがって、高齢心不全患者に多いHFpEFは、糖尿病とより密接に関係していると考えられます。 糖尿病を合併した心不全患者の治療方法は確立されていません。『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』では、運動や食事を中心とした生活習慣の改善を含めた包括的アプローチが重要とされています3)。HFrEF患者に対する運動療法の予後改善効果はこれまでに多く報告されていますが、最近ではHFpEF患者に対する運動療法の効果もあきらかとなってきています。運動療法はおもに有酸素運動とレジスタンス運動によって構成されます。心不全患者に対する有酸素運動とレジスタンス運動の処方を表2にまとめました。 運動療法は継続することが重要となるため、まずは初期処方から開始し、目標処方まで段階糖尿病と心不全の関係糖尿病を合併した心不全患者に対する運動療法心疾患(慢性心不全)が ある患者への運動指導動画でわかる! 合併症・併存疾患がある患者への運動指導11公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 リハビリテーション科 係長上坂建太 かみさか・けんた6 (492 ) 糖尿病ケア 2021 vol.18 no.6

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