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 2000年に労働省から事業場が行うべきメンタルヘルス対策の指針が示されてから20年が過ぎました。その間、対策の強化のために指針の改定が図られたり、職場復帰支援の手引きが示されたり、ストレスチェックが導入されたり、メンタルヘルス対策は徐々に充実してきました。各事業場においても実情に合わせてさまざまなメンタルヘルス対策が展開されています。しかしながら、メンタルヘルス対策は第13次労働災害防止計画でも重点施策として挙げられ、精神障害により労災認定される労働者数の減少も見られておらず、現在も優先的に取り組むべき産業保健活動の一つであり続けています。 20年間を振り返りますと社会経済状況は刻々と変化を続け、それに対応したり適応しなければならない労働者の負担もまた増え続けているように思います。今回のCOVID-19を契機としたリモートワークの普及や、今後予想されるAIの活用による業務内容の変更ならびに職種の淘汰など、労働者を取り巻く環境はさらにストレスフルな状況になっていくのではないでしょうか。それに直面する労働者の心の健康の保持増進を柔軟に支援する産業保健スタッフの役割はますます重要なものになっていくでしょう。 本書は、メンタルヘルス対策の中の労働者への支援に焦点を当てています。個別性の大きいメンタルヘルス不調者への支援では、産業看護職の果たす役割が大きく、きめ細やかな支援により職場を構成する労働者の一人である不調者が職場復帰して、職場の戦力としてイキイキと働けるようになることは、職場への支援にもつながります。また、不調者への支援を通じて上司や同僚がメンタルヘルス不調を理解して対応方法を学んだり、予防行動をとれるようになることを期待できます。反面、個別性が大きいからこそ、同じ対応方法では効果的な支援とはならず、産業看護職は日々悩みながら活動しているのではないでしょうか。さらに、職場復帰では不調者と職場の思いが異なれば、それぞれの立場を理解して全体の均衡を図るという調整力も求められます。支援には「こうすれば解決」という魔法はなく、メンタルヘルス不調者を支援する基本に立ち返りながら、個別性に合わせて応用していくことが大切だと思います。本書はメンタルヘルスの第一人者である先生方と実践者のみなさまが基本をわかりやすく解説していますので、メンタルヘルス対策や不調者への対応が初めての産業看護職が押さえるべきポイントを理解できることのみならず、経験豊富な産業看護職が支援を確認したり考えるときにも役立ちます。 働くことが苦役ではなく、一人ひとりが働きがいを感じられるような、ポジティブなメンタルヘルス状態を保持できるような働き方につながるように、メンタルヘルス不調を予防し不調者を支援できることに本書が寄与できますことを願っています。 2021年3月静岡県立大学看護学部 畑中 純子はじめに

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