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産業保健と看護2021春季増刊8はじめに メンタルヘルスとは、直訳すると「心の健康」という意味です。世界保健機関(WHO)によると、メンタルヘルスは「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」1)と定義されています。つまり、メンタルヘルスには、単に健康を保つだけではなく、さらによりよい状態になり、社会的に役立つことを目指すという意味が含まれています。本当の健康 同じくWHOの憲章前文によると、健康とは「完全な肉体的、精神的および社会福祉の状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」とされています1)。「病気ではないこと=健康」だとは言えないということです。 さて、では「私は健康だ」と自信を持って言える方が、いったいどのくらいいらっしゃるでしょうか。そして、何をもって本当の健康と言えるのでしょうか。活き活きと毎日を過ごすためには、心身の健康、生活面の健康、社会的健康の3つの健康が必要だとされています(図1)2)。11メンタルヘルス不調とは そもそもどういうことか図1 3つの健康(文献2より転載)心身の健康・心と身体の健康・健康の土台となる要素・バランスのとれた生活習慣が、心身の健康をつくる生活面の健康・毎日の生活のバランスがとれ、精神的な負担になっていないかどうか・仕事の時間がほとんどで、家族との時間がないなど、一部に偏っていると無理が生じる社会的健康・社会の中に自分の居場所はあるか。何か役割を任せられているか、誰かに求められているか・周囲の人と支えあう関係が、生きがいをつくり、人生の支えとなっている

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