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大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術  エビデンスに基づく手術手技と機種選択の実際 総合病院(582床)において同様のデータを調査した結果でも,両者間に大きな変動はなかった.2019年の大腿骨頚部骨折報告数から試算すると,入院医療費の推計総額は年間約760億円となる.これは人工骨頭置換術を施行した急性期病院での入院医療費に限られ,その後のリハビリテーション病院,療養型病院での医療費や合併症が生じた場合の医療費は含まれていない.自宅療養の場合でも高齢者が介護を要する状態になった場合に家族が介護離職を余儀なくされる可能性などを考えると,社会的経済的影響はかなり大きなものがある. 大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行する際に,術中術後の合併症を最低限に抑え,安全かつ医療経済的にも効率の良いものにしていくことは,患者自身のためだけでなく,健全な保険医療体制を継続させる観点からも極めて重要であり,エビデンスに基づく周術期管理,手術手技,機種選択などが必要とされる所以である. 本企画は大腿骨頚部骨折に対する人工物置換にフォーカスを当て,以下に提示するクリニカルクエスチョンにお応えできるよう,この分野の最先端でご活躍の先生方にご執筆いただいた.明日からの臨床のお役に立てていただければ幸甚である.クリニカルクエスチョン (転位型大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行するにあたって)①各国のガイドライン,femoral fracture databaseに基づく意見・勧告はどのようなものか?②手術アプローチについてのピットフォールなどを知りたい(特に前方アプローチの利点と注意点,後方アプローチでの術後不安定性への対策など).③骨脆弱性が顕著な症例に対するセメントレスステム機種選択の注意点は?④セメントステム機種選択の留意点は? またその手技における注意点は?⑤周術期の合併症予防の要点は? 特にセメント使用の安全性と術中の注意事項は?⑥術後ステム周囲骨折の予防とその治療法の実際は?⑦活動性の高い若年症例に対し,人工股関節全置換術を選択すべきか? またその際の適応と留意点は?1)日本の将来推計人口-平成28(2016)〜77(2065)年.人口問題研究資料第336号.国立社会保障・人口問題研究所編.厚生労働統計協会.2017.2)大腿骨近位部骨折 全国調査結果(2019年発生例調査結果).日整会プロジェクト研究事業.2020.3)Gullberg B.et al.World-wide projections for hip fracture.Osteoporos Int.5,1997,407-13.4)日本整形外科学会,日本骨折治療学会監修.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン策定委員会編集.大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021.改訂第3版.東京,南江堂,2021.5)National Clinical Guideline Centre.National Institute for Health and Clinical Excellence:Guidance.The Manage-ment of Hip Fracture in Adults.London,Royal College of Physicians (UK) National Clinical Guideline Centre.2011.6)Van Waesberghe J.et al.General vs. neuraxial anaes-thesia in hip fracture patients:a systematic review and metaanalysis.BMC Anesthesiol.17,2017,1-25. 7)OʼDonnell CM.et al.Perioperative outcomes in the con-text of mode of anaesthesia for patients undergoing hip fracture surgery:systematic review and meta-analysis.Br J Anaesth.120,2018,37-50. 8)渡邊園子ほか. 大腿骨頚部骨折治療における治療成果の分析.医療と社会.13(3),2003,87-101.文 献整形外科Surgical Technique vol.11 no.3 2021(285)15

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