40理想だけでは運営はうまくいかない 看護師という資格を活かして起業する場合、まず、頭に思い浮かぶのが訪問看護ステーションでしょう。 かつて、起業は大会社を想定した法律となっていたため、さまざまな条件のハードルが高いものでした。しかし、2006年の新会社法の施行により、資本金1円から株式会社を設立できるようになるなど、中小規模の会社の企業がしやすくなりました。こうした追い風的な社会的状況があり、また、訪問看護ステーションの開設自体も、そう難しいものではありません。また、医療保険、介護保険という制度に基づいて実施する事業のため、安定しているようにも思えます。 こうした理由からか、訪問看護ステーションの事業所数は2010年から右肩上がりとなっています。しかし、一方で見逃せないのが、毎年、新規届出数の約半分のステーションが休止・廃止をしていることです(1章2、p13参照)。 休止・廃止の理由には、それぞれの事情があると思いますが、上記のような理由から、安易な考えで始めてしまい、そのうちに経営が行き詰まるケースが少なからずあることも確かです。訪問看護ステーションは地域包括ケアシステムの要とも言われ、数が足りないとも言われています。それは事実ですが、都心部では事業所数の過剰からの競争があったり、地方では、点在する利用者を訪ねるため訪問の効率が悪いなど、難しい現実があります。それぞれの地域事情にあわせ、どのようなケアを提供したいのか・するのかといったことも含めた経営戦略が、現在の訪問看護ステーションには求められます。 経営戦略と聞くと構えてしまう向きもあるかもしれませんが、事業として成り立ってこそ、自分のやりたい看護が実践でき、ひいてはそれが、利用者の役に立つことにもつながります。いくら高邁な理想があっても、拠って立つ基盤がなければ実践のしようがありません。 本書では、せっかくの思いと努力が水泡に帰さぬようにするために、ここだけは知っておきたいという経営・運営のポイントをまとめています。ぜひ、まずは右のチェックリストを行ってみて、足りないと感じた部分があれば、矢印で示したページを開いて当該項目を読んで参考にしてください。20章開業前に行っておきたい、各ステージの準備のチェック
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