原口直樹 Naoki Haraguchi■聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院整形外科病院教授・副院長足関節果部骨折A治療コンセプト0112はじめに 足関節果部骨折は,橈骨遠位端骨折や鎖骨骨折とならんで,整形外科医が治療する頻度が最も高い骨折の一つである.外果,内果および後果が骨折し得るが,同時にしばしば脛腓靱帯や骨間膜,三角靱帯などの軟部組織も断裂して距腿関節窩が破綻し,距骨は亜脱臼位となる. 安定した足関節を再建するためには,内側の損傷のない外果の単独骨折を除けば,骨折の解剖学的に整復は必須である.基本に従って治療すれば予後は良好であるが,時に変形治癒や変形性関節症が起こり得る.受傷機転,症状 交通外傷やスポーツ外傷,階段の踏み外しなどで,足関節に回旋と軸圧が加わることによって発生する.足関節周囲に腫脹や皮下血腫を認める.足部に外旋の力が働いて発生するために,しばしば足部が外方に向いて変形した状態で来院する.経過とともに腫脹や浮腫が増悪し,放置すると皮膚に水疱を形成する.変形に伴って内果骨折部の皮膚が突出するが,時に皮膚を破って開放骨折となる. 果部骨折の分類は複数あるが,腓骨骨折の高さで分類するとわかりやすい.すなわち脛腓骨靱帯結合の高さでの骨折(短い螺旋骨折:Danis-Weber分類のtype B,Lauge-Hansen分類1)の回外-外旋骨折,Haraguchi分類の外旋骨折2,3))と脛腓骨靱帯結合より高位の骨折(骨折線は前上方から後下方,時に第3骨片を伴う:Danis-Weber分類のtype C,Lauge-Hansen分類の回内-外旋骨折あるいは回内-外転骨折,Haraguchi分類の外旋-外転骨折)である.これらに内果骨折や三角靱帯断裂,後果骨折が合併する(表1).診 断 単純X線写真で足関節の脱臼・亜脱臼の有無を確認する.腓骨骨折の形状と足関節からの高さ,内果骨折および後果骨折の有無とその大きさをみる.特に腓骨骨折の高さの評価は,脛腓骨靱帯結合のスクリュー固定の適応を決定するうえで重要である.X線写真において脛腓骨靱帯結合レベルでの外果単独の骨折を認め,かつ距骨と内果の間の関節裂隙(medial clear space)が開いていない場合,三角靱帯断裂の有無を明らかにする目的で,重力ストレス撮影4)を行う(図1).距骨と内果の間の距離が4mm以上であれば,三角靱帯の断裂ありと考える(図2).X線側面像で後果骨折を認める症例に対しては,CTを撮影してその大きさおよび形状を評価する.特に内果上方に至る大きな骨片やそれが2つに分かれているものがあり,注意を要する5)(図3).治療コンセプト(表1) 来院時に足関節の脱臼や亜脱臼がみられる場合は,関節内に局所麻酔薬を注入して可能な限り整復して外固定し,早期に手術を施行する.整復位が保持で
元のページ ../index.html#8