nursingraphicus2021
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101サンプルページアニメーション・動画37本収録!在宅療養を支える技術在宅看護論 ❷第5章●在宅療養を支える災害対策在宅療養における災害対策/地域包括ケアシステムにおける災害対策/訪問看護師による災害時対応/コラム:3.11の経験から地域ネットワークのあり方を振り返る/コラム:熊本地震と在宅療養者支援第6章●事例で学ぶ在宅看護の技術在宅での自己管理を続けている糖尿病のある独居高齢者/在宅で老々介護を開始する高齢の療養者/被虐待が疑われる認知症高齢者/在宅での生活を希望する脳梗塞後遺症のある高齢者/最期まで自宅で過ごしたいターミナル期のがん療養者/在宅での生活に不安を抱きつつ退院するALS療養者/事故により中途障害者となった成人男性/在宅での生活を希望する精神障害者/地域で生活する重症心身障害児付 録●やってみよう! 訪問看護演習※視聴方法は16ページをご覧ください472在宅療養生活を支える基本的な技術1.正しい情報を伝える 感染症に対する情報が適切に理解されていない場合,家族は感染症に対し過剰に不安を抱くことがある.感染症についての正しい情報を伝え,療養者に起こり得る感染症の徴候やその対処法を指導する(図2.5-4).2.感染症をもち込ませない 家族が外部から感染症をもち込まないため,スタンダードプリコーションをはじめ,予防接種の勧奨,家族が体調不良のときには療養者に近づかないなど,状況に応じた指導を行う.3.感染症を広げない 感染症は家族内で伝播する恐れがあるため,それぞれの感染症に応じた対策を指導する.例えば,疥癬など接触感染によるものは,肌を露出しない服装(長袖,長ズボン)にビニールやゴム製の手袋を着用してケアに当たること,リネンなどは持ち運びの際はビニール袋に封入し,洗濯機で普通に洗濯し,天日干し,あるいはアイロンなどで十分に熱を加えればヒゼンダニが死滅することなどを具体的に伝える. 療養者が利用しているサービスは,原則として継続できるように,介護支援専門員(ケアマネジャー)や関係者と,療養者についての情報を共有する.また,関係者が感染症に対して偏見や不安を生じないよう,対策やスタッフの健康管理に関しても正しい情報を伝え,共に対策を講じることが大切である. 在宅で用いられる医療器具は,現状では廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)による規制を受けないため,原則として家庭ごみと同様の扱いとなっている.注射針は,主治医や訪問看護ステーションなどを通じて回収するなど,定められた方法で廃棄する.その他の物品は,自治体の取り決めに従って廃棄する.2. 家族関係者への指導3. 利用しているサービスの関係者などへの指導4. 感染性廃棄物の取り扱い●関係機関との連携● 療養者が感染症を発症した場合には,症状の発生時期,最初に出現した症状,現在の症状,家族や介護者の症状の有無などを確認した上で,主治医,ケアマネジャー,関係者と密に連絡を取り合う.●特別訪問看護指示書● 感染症により頻回な訪問が必要と判断された場合,主治医から特別訪問看護指示書(有効期限14日以内,月1枚)が発行される. 4感染症発生時の対応特別訪問看護指示書介護保険利用者であっても,14日間に限って医療保険に切り替わり,毎日あるいは1日に複数回の訪問看護が可能となる.療養者の健康管理やケアを集中的に行って早期の回復を促し,病状悪化の防止に努めることが可能となる.●嘔吐物の処理●衣服の汚れ手袋を外す.嘔吐物などの場所を消毒液に染ませた布やペーパータオルなどで覆う.汚物が拡散している場合は,外側から内側に拭き取る.手洗いを入念に行う.熱湯を回しかける.煮沸する.消毒液に浸す.使用した物は袋に密閉して処分する.全体を0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で拭く.図2.5-4●二次感染を防ぐための吐物処理1334療養を支える看護技術(医療ケア) 4援助の実際 ストーマ用装具は,ストーマに装着するストーマ袋と皮膚に接着する面板の二つからなるが,装具には,形状や局所条件に対する特徴や年齢・生活状況に関する特徴を組み合わせた多くの種類がある.ストーマのサイズに合わせた面板をカットし,腹壁の状態に適した装具を使用することが大切である. 入院時はトラブルなく退院した患者でも,日常生活を行う中で,頻回の漏れや皮膚トラブルに悩まされることもある.そのため,以下の点に配慮し予防的ケアを心がける.① ストーマのサイズに合わせて面板をカットし,腹壁に適した装具を選択するほか,適切な時期に装具を交換し漏れや皮膚トラブルを予防する.② 装具の交換の目安は,皮膚保護剤が1cm以内に溶けた状態のころであるが,排泄物の性状や発汗により皮膚のトラブルが予測される場合は,早めに交換したり皮膚保護剤を使用したりする.また,装具は粘着剥離剤を用いて剥がし,弱酸性の洗浄剤で優しく洗うことで,機械的刺激による皮膚トラブルを予防する.③ 粘着剤・皮膚保護材やテープによるアレルギー反応がある場合は,粘着剤・皮膚保護材を変更したり,刺激の少ないテープを選択したり,テープの使用を中止するなどして,皮膚トラブルに対応する.④ 装具交換時の脱毛による毛嚢炎を予防するために,体毛を切っておくなど,事前の対応を行う.1. ストーマ用装具の種類と管理 準備する物品: ストーマ装具,リムーバー(粘着剥離剤),石けん,洗面器(お湯),不織布(タオル),ゴミ袋,ゴム手袋.2. 装具交換の手順●ストーマ装具の交換〈動画〉の場所に配置する.使用装具の製品名や番号,サイズなどのコピーも身体障害者手帳と一緒に保管するとよい.また,灌注排便法で管理をしている療養者に対しては,災害時には場所や水の確保が難しくなるので,自然排便法に変更しなければならないことも説明する47).❶リムーバーを少し垂らし,皮膚を指で軽く押さえるようにしながら装具を剥がす(シャワーの湯でも可).❷このように腸粘液が排泄されていることもあるが問題ない.❸ストーマ周囲の皮膚を石けんで洗浄する.ストーマと皮膚の接合部に汚れが付着していることが多い.❹石けん分を微温湯で流す(拭き取り,シャワーのどちらでも可).湯で流した後は,皮膚の水分をしっかり拭き取る.ストーマのサイズを測定し,装具をカットする.装具の裏の剥離紙を剥がす.腹部のしわをのばして,装具を貼付する.装具の上からしばらく手で押さえて密着性を高める(装具交換終了).❺❻❼❽p.47713日常生活を支える看護技術1.居室からトイレまでの経路 居室からトイレまでの距離を短くするために,住宅改修またはポータブルトイレを利用する.トイレまでの動線上には,手すりや足元照明の設置,段差解消を図り,スムーズに移動できるようにする.ADLが低下している療養者には,トイレのドアは外開きまたは引き戸タイプが適している.認知症療養者の場合,入口にトイレマークを付けるのも効果的である.2.トイレの環境 洋式便座(暖房付き・温水洗浄便座),手すりの設置,汚れを拭き取りやすく滑りにくい床面,療養者や介護者が動きやすい広さであることが望ましい.冬場はヒートショック予防のため暖房ができるとよい. 排泄補助用具は,排泄動作を助けるもの(手すり,便座など),排泄物を受けるもの(尿器,差し込み便器,ポータブルトイレなど),直接肌につけるもの(おむつ,パッド,下着など)といった種類がある(図3.3-2).安全かつ快適に排泄動作ができるように療養者に合わせて選択する. 近年,国や地方自治体などにより,排泄環境を整えるためのさまざまな取り組みが進められている.トイレマークもその一例である(図3.3-3).介助が必要な人,ストーマを造設している人,乳幼児のおむつ交換に至るまで,排泄障害やケアを必要とする人々が利用しやすい工夫がなされている(図3.3-4). また,駅などの公共の場で異性のトイレに付き添う場合,外見からは介護中であることがわかりにくい.このような誤解や偏見をなくし,介護をする人にもやさしい社会を目指して,静岡県で介護マークが考案され,全国に普及し始めている(図3.3-5).1. 環境整備の例2. 排泄補助用具の種類と選択方法3. 支援のためのさまざまなマーク段差なし引き戸または外開き居室トイレ家具調ポータブルトイレ写真提供:アロン化成株式会社.自動採尿器写真提供:パラマウントベッド株式会社.図3.3-2●在宅で活用できる主な排泄補助用具図3.3-3●トイレマークの例図3.3-5●介護マーク静岡県ホームページより.図3.3-4●公共ユニバーサルトイレ写真提供:Osaka Metro(新大阪駅).かざして見る!写真やイラストを用いた解説で知識が整理できる

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