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105サンプルページ看護管理看護の統合と実践 ❶※視聴方法は16ページをご覧くださいアニメーション・動画7本収録!44成し遂げ,より良い状態を創り出すことである.(2)マネジメントサイクル マネジメントサイクル(図2.3-2)とは,日常的に繰り返される経営上の手順のことで,代表的なものに,計画(Plan),実行(Do),評価(Check),改善(Action)の頭文字をとったPDCAサイクルがある(図2.3-3).PDCAサイクルという概念が生まれたのは第2次世界大戦後で,武器製造の品質向上をきっかけに品質管理手法の構築にあたったシューハート(Shewhart, W. A.)やデミング(Deming, W. E.)らによって提唱された.PDCAサイクルの概念はアメリカで生まれたが,デミングが来日して指導にあたったことから,日本の生産管理,品質管理の現場で進化を遂げることになった. マネジメントサイクルは,マネジメントプロセスと類似した考え方である.マネジメントプロセスの「計画化」「組織化」「人事化」はマネジメントサイクルの「計画」に,「指揮」は「実行」に,「統制」は「評価」「改善」に該当する. マネジメントプロセスとマネジメントサイクルは異なる領域で発展してきた考え方であるが,両者が類似していることからも,マネジメントの本質は,計画を立て,実行し,評価して改善するという一連の活動であるといえる.(1)ギリーズの看護管理システム 一般的な管理におけるマネジメントプロセスの考え方は,看護過程,看護管理過程にも応用できる. 看護管理学の研究者であるギリーズ(Gillies, D. A.)は,看護管理者の仕事を,「最も有効で可能なケアを患者およびその家族の人々に与えるために,計画し,組織化し,指示を与え,そして入手できる財政的・物質的・人的資源を統制することである」5)と定義した.そして,看護管理過程は,看護過程と同じく,データの収集,計画,計画の実行,結果の評価を含んでいることを示した(図2.3-4)6). ギリーズは,システム理論を基盤にして,データ収集,計画立案,組織化,職員配置,指導,統制からなるプロセスに,外部の環境との相互作用も含めた看護管理シス 2看護管理システムシステム理論生物学者のベルタランフィ(Bertalanffy, L.)が1945年に提唱した一般システム理論が代表的な理論である.システムとは,複数の異なる要素が互いに影響しあいながら,全体として特定の目標を達成するしくみやまとまりであり,それを機能させるための理論や手法をシステム論という.システムの要素には,インプット,プロセス,アウトプット,フィードバックがある.図2.3-1●マネジメントプロセス組織化計画化統制人事化指揮図2.3-2●マネジメントサイクル(PDCAサイクルの例)計画(Plan)評価(Check)改善(Action)実行(Do)図2.3-3●PDCAサイクル計 画(Plan)a.目的を明確にするb.管理項目を決めるc.目標(管理水準)を決めるd.実行手順(作業標準)を定める実 行(Do)a.教育・訓練を行うb.手順通りに実行する評 価(Check)a.目標が達成できたか確認するb.他に不具合がないか確認する改 善(Action)a.応急対策(不具合現象を取り除く)b.再発防止策(根本原因を除去する)1856看護職とキャリアに適したよいケアの提供にもつながる.よいケアを通じた人と人の相互作用は,さらに仕事の充実感や意欲につながるだろう.(3)看護師のキャリアの例 ここでは,看護職として多様なキャリア発達を実現した例をみてみよう.専門領域を深めるために認定看護師を目指したAさん 大学病院に就職し,内分泌代謝内科に配属された.3年後,消化器外科病棟に異動となったが,消化器外科病棟でも糖尿病の知識が活用できる機会が多いことから,糖尿病患者への看護に関心をもち,積極的に院内外の勉強会や講習会に参加するようになった.異動から2年後,結婚,引越しを機に大学病院を退職し,通勤可能な市中病院に再就職した.内科混合病棟に勤務する中で,大学病院で培った糖尿病の知識を患者ケアに生かせることを実感し,より知識を深めたいと考えるようになった.Aさん自身の希望と,上司の勧めもあり,認定看護師になることを決意.その1年後,糖尿病看護認定看護師教育課程に応募した.6カ月休職し教育課程を修了,認定審査を受け糖尿病看護認定看護師となった. 現在,専門的な知識・技術を生かした日々の看護ケアに加え,病院の中で組織横断的に働く糖尿病ケアチームでの活動,糖尿病教室の運営に携わっている.課題を明確にしてステップアップするBさん 公立病院に就職し,一般外科病棟3年,頭頸部外科病棟4年を経て,循環器病棟に異動となったBさん.今までの病棟経験に加え,循環器病棟で繰り返し入退院する患者との関わりを通し,退院支援や外来看護の重要性を強く感じるようになっていた.そんな折,病棟での退院調整係となり,退院調整に関わる知識やケアを積極的に伝える役割を担うようになる.結婚後,出産・育児休暇を経て,短時間勤務で職場復帰.復帰後は循環器内科を含む外来に異動となったが,外来で退院後の患者と関わる中で,退院支援についての課題が明確となった. 現在,Bさんは患者支援室に異動し,退院調整に携わる看護師として勤務している.訪問看護ステーションを起業したCさん 総合病院の内科病棟に就職したCさんは,3年後,学生時代から関心があった訪問看護師になるため病院を退職し,訪問看護ステーションに再就職.経験を積みながら,3年後にはケアマネジャーの資格を取得した.訪問看護を通し,医療的なケアが必要であったり,つらい症状がある利用者でも,適切なプランを作成しケアが提供されれば,自宅でその人らしく生活できることを感じていた.その後,自分が理想とするケアを目指し,訪問看護ステーションを立ち上げた.p.2132138看護活動をとりまく法律・制度特定行為研修へ派遣するに当たっては,各施設において,本制度を活用する意義や研修を修了した看護師に期待する役割などのコンセンサスを得るとともに,研修を修了した看護師が,期待される役割を発揮できるような体制の整備を行うことも看護管理者には求められている15).(4)看護基礎教育に関する動向 質の高い看護職の養成を目指し,教育カリキュラムの改正は,時代や国民のニーズの変化等に応じて,おおむね10年に1回程度のペースで実施されており,直近では第4次改正(2008年)が最後である.その後,看護の質の向上,医療安全の確保や新人看護職員の早期離職防止の観点から,医療機関の機能や規模にかかわらず,新人看護職員を迎えるすべての医療機関で研修が実施される体制の整備を目指して新人看護職員研修ガイドラインが国によって作成され,2010(平成22)年に新人看護職員研修が努力義務化された.→新人看護職員研修制度についてはp.175参照.図8.2-7●看護師の業務範囲に関する法的整理医師の業務看護師の業務主治医の指示を必要とする業務医 業(医師法第17条)診療の補助(保助看法第5・37条)療養上の世話(保助看法第5条) •主治医の指示を必要としない業務静脈注射(昭和26年9月)静脈注射(平成14年9月)特定行為•診療機械の使用•医薬品の授与•医薬品についての指示•その他医師または歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為看護教育水準の向上,医療用器材の進歩,医療現場における実態との乖離等の状況を踏まえて見直し•薬剤の投与量の調節•救急医療等における診療の優先順位の決定(平成19年12月)患者の状況を自律的に判断し,特定行為を手順書により実施することが可能厚生労働省.第2回チーム医療の推進に関する検討会.http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1005-6b.pdf.(参照2017-09-20)より一部改変.図8.2-8●制度の対象となる診療の補助行為実施の流れ病状の範囲外現行と同様,医師または歯科医師の指示の下に,手順書によらないで看護師が特定行為を行うことに制限は生じない.特定行為に係る看護師の研修制度を導入した場合でも,患者の病状や看護師の能力を勘案し,医師または歯科医師が直接対応するか,どのような指示により看護師に診療の補助を行わせるかの判断は医師または歯科医師が行うことに変わりはない.医師または歯科医師が患者を特定した上で,看護師に手順書により特定行為を実施するよう指示看護師が手順書に定められた「診療の補助の内容」を実施看護師が医師または歯科医師に結果を報告医師または歯科医師に指示を求める病状の範囲内「患者の病状の範囲」の確認を行う事例を用いてよりイメージしやすいように工夫p.44難しい内容をわかりやすく図解

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