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あああああああああああああああ109サンプルページアニメーション・動画いことが唯一の予防策である.②火山性ガスと噴石 火山噴火では,大量の二酸化炭素や硫化水素などの有毒ガスと同時に,初速300km以上の速さで多くの噴石が噴出する.御嶽山の噴火災害では大量の噴石が噴出したため,死者の死因の多くは噴石による外傷であったといわれている.(5)雪害 日本は,国土のうち約50%が豪雪地帯に指定されている.大地震がない平時の災害死の原因では,雪害の占める割合が相対的に高い(図2.1-3).●雪害による疾病の特徴● 降雪の初期に,気温の変化に体が順応できず,除雪作業中に心筋梗塞や脳血管疾患を発症して死亡する事例や,屋根の雪下ろしによる家屋からの転落外傷が増加する.(1)大型交通災害:列車事故 鉄道や船舶は一度に大量の人やものを輸送するため,事故が起こると多数の傷病者が発生する.また大型交通事故は,その地域の交通網を損傷し流通に支障をきたすため,社会経済に与える影響も大きい.加えて大規模災害の場合,人為的要因が複数にまたがることが多いため,その責任の所在をめぐって社会問題化する傾向にある.●列車事故による疾病の特徴● 列車内の乗客はシートベルトを装着していないため,列車が脱線・衝突するとその衝撃で体が車体に叩きつけられ,多発外傷を招く.変形した車体に閉じ込められ車外への救出が困難な場合には,医療者が現場に入って治療を行うがれきの下の医療が求3人為災害図2.1-2●自然災害による死者・行方不明者の推移1945 48 51 54 57 60 63 66 69 72 75 78 81 84 87 1990 93 96 99 2002 05 08 11 140注)平成27年版防災白書より作成,一部改変(平成23年は東日本大震災の犠牲者のみ).(年)御嶽山の噴火災害2014(平成26)年9月,長野県と岐阜県にまたがる御嶽山(標高3,067m)が突然噴火し,噴煙が約7,000m上空まで噴き上がった.死者58人,行方不明者5人を出す戦後最悪の噴火災害となった.写真提供:朝日新聞社3111本収録!災害看護看護の統合と実践 ❸第5章●配慮を必要とする人への支援と看護支援を必要とする要配慮者/乳幼児および子どもに必要な支援と看護/妊産褥婦に必要な支援と看護/高齢者に必要な支援と看護/障害者に必要な支援と看護/継続的な治療が必要な人への支援と看護/外国人に必要な支援と看護/遺族に必要な支援と看護/コラム:人生の統合と災害:平成28年熊本地震の支援から,『特別支援学校用災害シミュレーションパッケージ』の活用第6章●被災者と支援者の心理の理解と援助被災者の心理の理解と援助/支援者の心理の理解と援助/コラム:足湯ボランティア,災害時の乳癌患者の困難と支援を考える第7章●災害初期から中長期における看護活動初動時(超急性期・急性期)における看護活動/医療救護所での看護活動/避難所での看護活動/応急仮設住宅での看護活動/自宅避難者に対する看護活動/復興期の看護活動/コラム:応急仮設住宅での24時間365日体制の支援活動,災害訓練企画マニュアルに取り組んで第8章●災害時に必要な医療・看護技術体系的対応の基本原則/トリアージ:Triage/応急処置・治療:Treatment/移送・搬送:Transport/コラム:「御嶽山噴火災害」を体験して,災害時における要配慮者トリアージへの取り組み第9章●災害看護教育と研究災害看護教育/災害看護研究/コラム:災害看護専門看護師教育課程での学び,東日本大震災からの提言—その時何が起き,どう対処したか—宮城県岩沼市・スズキ記念病院の実際第10章●災害看護と国際看護国際看護とは/日本における国際看護/海外における災害看護と国際看護活動/コラム:ネパール大地震の経験から,外国人医師から見た日本の国際看護ARとの連動で災害情報がよりリアルに!※視聴方法は16ページをご覧くださいp.183(1)応急仮設住宅の定義 応急仮設住宅(図7.4-1)とは,災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づき行政が建設する簡易住宅で,災害で住家が滅失した被災者のうち,自らの資力では住宅を確保することができない者に対し一時的な居住の安定を図るため,無償で貸与(実費等経費を除く)される.その他,市営住宅の空室や空き家を借り上げ,応急仮設住宅として利用する応急借上げ住宅や,高齢者等の要援護者等を数人以上収容する福祉仮設住宅がある.これらの供与期間は,建築工事が完了した日から最長2年3カ月以内とされているが,災害復興住宅の建設の遅れ等により,期間を超えても多くの人が生活しているのが実情である.また,応急仮設住宅の広さは1戸当たり29.7㎡(9坪:2DK)が基準で,国の補助対象限度額は平均253万円/戸以内である.(2)応急仮設住宅で暮らす人々の現状 東日本大震災後,2012(平成24)年4月に12万1,850戸あった応急仮設住宅は,4年6カ月が経過した2015(平成27)年9月時点では,3万2,676戸(6万8,083人)まで減少し,多くの被災者が耐久住宅へ転居した1).しかし,災害公営住宅等の恒久的な住宅の整備が整わないため,全体のうち26.8%の応急仮設住宅では,供与期間が延長されている. 建設を急ぐ必要のある応急仮設住宅は,その時,空いている土地を利用するため,店舗や公共施設から遠く利便性の悪いところに建てられることが多い.入居にあたっても,避難所のコミュニティーが生かされることはなく,さまざまな地域から集まった人々の間で新たなコミュニティーを構築しなければならない.このような状況下にある入居者は,狭い応急仮設住宅の中から外に出たがらなくなり,特に高齢者の間では,生活不活発病による機能低下が増加する.また,被災による外傷や,ストレスの多い避難生活が起因する疾患やアルコール依存症,認知症,精神疾患,心疾患などを抱える人も多い.加えて,広い敷地で生活していた環境から一転し,隣の生活音が気になるストレスの多い環境下であるため,近隣トラブルも少なくない. 看護職者は,入居者が可能な限りストレスを蓄積させることなく生活できるよう,そして何よりも人間としてその人らしく生きて行けるよう支援しなければならない.(1)応急仮設住宅における支援の現状 東日本大震災後の応急仮設住宅では地元の行政機関,社会福祉協議会,ボランティアセンター,地域包括ケアセンターをはじめ,震災後に設立された心のケアセンター,4応急仮設住宅での看護活動1応急仮設住宅2応急仮設住宅における看護職者の役割宮城県気仙沼市の応急仮設住宅.2011(平成23)年5月から入居が始まり,当初は102世帯が生活していた.2016(平成28)年9月現在も,67世帯が暮らしている.図7.4-1●応急仮設住宅応急仮設住宅入居者を支える支援者応急仮設住宅入居者等サポートセンター(宮城県気仙沼市):孤立化や引きこもりなどを防止するため,入居者に対する総合相談の実施や交流活動を通して,安心した生活が送れるよう支援している.主に看護師,介護福祉士等で構成される.友愛訪問員:被災地の応急仮設住宅等で暮らす高齢者世帯を訪問し,話し相手や手伝いを行うことで孤立化や引きこもりを予防することを目的に活動している.地域支援員:気仙沼市震災復興・企画部 震災復興・まちづくり推進課が担当しており,12人の支援員で構成されている.主な活動内容は,応急仮設住宅自治会に伴走しながらの運営上の課題解決,住民への各種情報提供,まちづくりの担い手育成等である.1837災害初期から中長期における看護活動災害看護の実際を詳しく解説かざして見る!

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