nursingraphicus2021
121/148

サンプルページアニメーション・動画※視聴方法は16ページをご覧ください脳・神経E‌X疾患と看護 ❺11916本収録!第7章●頭部外傷頭蓋骨骨折/急性硬膜外血腫/急性硬膜下血腫/慢性硬膜下血腫/脳挫傷/びまん性軸索損傷/スポーツ頭部外傷第8章●水頭症水頭症第9章●感染性疾患髄膜炎/単純ヘルペス脳炎/進行性多巣性白質脳症/亜急性硬化性全脳炎/プリオン病/脳膿瘍第10章●脊椎・脊髄疾患変形性脊椎症/後縦靱帯骨化症/腰部脊柱管狭窄症/椎間板ヘルニア/脊髄損傷/脊髄炎/脊髄腫瘍/その他の脊椎・脊髄疾患第11章●神経変性疾患・不随意運動症パーキンソン病/ジストニア/筋萎縮性側索硬化症/多系統萎縮症/ハンチントン病/脊髄小脳変性症第12章●認知症アルツハイマー型認知症/レビー小体型認知症/前頭側頭型認知症/血管性認知症/その他の認知症疾患第13章●末梢神経疾患末梢神経障害(ニューロパチー)/その他の神経疾患・神経症状第14章●脱髄性疾患多発性硬化症/視神経脊髄炎第15章●筋疾患重症筋無力症/筋ジストロフィー/その他の筋疾患第16章●てんかんてんかん第3部 事例で学ぶ脳・神経疾患患者の看護第17章●脳梗塞患者の看護第18章●くも膜下出血患者の看護第19章●パーキンソン病患者の看護第20章●筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の看護5脳血管障害脳梗塞1cerebral infarction1脳梗塞とは1発生機序・病型 脳梗塞とは,脳動脈の閉塞により,その血管の支配領域にある脳組織が障害される疾患である.年間約6万人が脳梗塞で死亡しており,脳卒中による死亡数の約6割を占める. 脳梗塞自体は脳の動脈が閉塞することによって発症する単純な病態であるが,閉塞に至る原因にはさまざまな臨床的背景と発生機序が関連しており,その解明は時として非常に困難である.しかし,これを確実に解明して病型を診断しなければ,間違った治療につながることになる.病型診断こそが,脳梗塞治療における最も重要なポイントである. 脳梗塞の発生機序は,血栓性,塞栓性,血行力学性の三つに分類され(図5-1),臨床病型は主にアテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓,その他に分類される(図5-2).発生機序と臨床病型の組み合わせにより,脳梗塞の病型診断を行い,治療法を決定する.発生機序血栓性 動脈硬化性プラーク*による血管の狭窄が原因で血栓が生じ,さらに血管が血栓により閉塞する病態.動脈硬化性プラーク動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪や線維性成分などが蓄積したもの.アテロームとも呼ぶ.*血栓性塞栓性血行力学性動脈硬化性プラークによる動脈の狭窄と,血栓による血管の閉塞が原因で脳梗塞が生じる.頸動脈や心臓で生じた血栓が遊離して,脳内の血管を閉塞することが原因で脳梗塞が生じる.近位血管に閉塞・狭窄があると,急激な血圧低下や脱水などの循環不全の際,遠位血管の血流が低下し,脳梗塞が生じる.動脈硬化脳梗塞図5-1■脳梗塞の発生機序1155脳血管障害治療(脳動脈瘤コイル塞栓術)がある.開頭クリッピング術は全身麻酔下に開頭を行い,動脈瘤の頸部(ネック)をクリップで遮断する方法である(図5-19).コイル塞栓術は,マイクロカテーテルという細いカテーテルの先端を脳動脈瘤内に留置し,カテーテルを通して動脈瘤内にコイル(形状記憶合金)を留置し動脈瘤内の血栓化を行う治療である(図5-20).どちらを選択するかについては年齢などの患者背景,脳動脈瘤の場所や性状を含め,総合的に治療の適応を判断することが必要である. 脳卒中治療ガイドライン2015では,具体的に「椎骨脳底動脈に存在する動脈瘤や前床突起近傍の内頸動脈瘤,高齢者,多発動脈瘤患者は血管内治療を考慮し,中大脳動脈瘤および巨大な血腫を伴う症例では外科治療を優先,動脈瘤サイズが3mm以下の微小動脈瘤では血管内治療による術中破裂のリスクが高く,外科治療を検討する.また,頸部の広い動脈瘤や大型および巨大脳動脈瘤では不完全閉塞や再開通率が高く,血管内治療には不向きである」と記されている6).遅発性脳血管攣縮の治療 脳血管攣縮はくも膜下出血後に特徴的な合併症で,くも膜下出血発症後早期(48時間以内)に起こる早期攣縮と,4~14日目に起こる遅発性攣縮に分けられる.早期攣縮は約10%に認め,発症直後の重症度に影響する.遅発性攣縮は半数以上に認め,15%は予後不良である.症状は頭痛のほか,攣縮を起こした図5-20■コイル塞栓術術前脳動脈瘤術後脳動脈瘤コイル塞栓図5-19■開頭クリッピング術クリッピング後クリッピング前脳動脈瘤脳動脈瘤ネッククリッピング1375脳血管障害ある.頻度は日本では人口10万人あたり約20人とされる.男女比は1:2で女性に多く,発症のピークは男性で50代,女性で70代である. くも膜下出血の原因は,外傷を除くと脳動脈瘤の破裂が最も多く85%を占める.そのほか,脳動静脈奇形,もやもや病,出血性素因などがくも膜下出血の原因疾患となる.2病態 脳動脈瘤とは,脳動脈の血管壁(特に脳血管が分岐する部位)が囊状に膨らんだものをいう.動脈壁の一部(中膜)に血流・血圧などの流体力学的なストレスが長期に加わることにより,徐々に膨らんで形成されると考えられている(図5-12).囊状に膨らんだ血管壁は薄く,脆弱なため,突然裂けることがある.これが脳動脈瘤の破裂で,動脈性の出血が急激にくも膜下腔に流入し,くも膜下出血となる(図5-13).これ以外の成因に,動脈壁の層構造が解離し,その間隙に血液が流入するために生じる解離性動脈瘤,細菌性感染症や外傷などもある. 囊状脳動脈瘤の好発部位は,主幹動脈の,特にウィリス動脈輪を形成している動脈の分岐部である.くも膜下出血の原因は,前交通動脈瘤が約30%,内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤が約30%,中大脳動脈瘤が約20%,椎骨脳底動脈瘤が約10%とされる(図5-14).3症候 くも膜下出血の特徴的な症状は,突然起こる激しい頭痛,嘔吐,意識障害である.「バットで殴られたような」「これまで経験したことがない」などという訴えが多い.これは,動脈性の出血が急激にくも膜下腔に流入し,急激に頭蓋内圧が亢進することによって起きる症状である.身体所見として,髄膜刺激症状である項部硬直や,ケルニッヒ徴候を認め図5-12■未破裂脳動脈瘤脳動脈の血管壁が囊状に膨隆している.動脈瘤ネック正常脳表くも膜下出血脳表.くも膜下腔に血腫が充満し,正常脳表が血腫で覆われている.図5-13■くも膜下出血133写真や図解で症候の理解が深まる

元のページ  ../index.html#121

このブックを見る