nursingraphicus2021
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サンプルページアニメーション・動画※視聴方法は16ページをご覧ください女性生殖器E‌X疾患と看護 ❾1276本収録!全体に丸く腫大しており,後壁が前壁に比べて厚い.図7-6■子宮腺筋症の超音波像像小囊状エコー図7-7■子宮腺筋症と卵巣チョコレート囊胞合併のMRI像(T2強調)癒着していると思われる点状高信号子宮腺筋症卵巣チョコレート囊胞子宮内膜正常卵胞7子宮の疾患▶超音波断層法(経腟,経直腸,経腹) 子宮壁に境界不鮮明なびまん性,あるいは腫瘤様の像がみられ,子宮前壁と後壁の筋層の厚さが不均等になる(図7-6).筋層の厚くなった部分に小囊胞状エコーが見られれば診断に結びつくが,筋腫との鑑別が難しいことも多い.▶MRI 子宮腺筋症の診断に最も有用な検査である.T2強調画像にて厚くなった筋層内に異所性内膜が散在性の点状高信号として認められる(図7-7).3治療 閉経を迎えれば症状は消失し,子宮も縮小するが,病変は残る.ごくまれに異所性内膜からの内膜癌が発生したとの報告がある.薬物治療 対症療法として,造血薬(鉄剤),止血薬(トラネキサム酸),非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),漢方薬を使用する.貧血の治療が必要となることが多い.エストロゲン依存性の疾患であるため,ホルモン治療では子宮内膜症に準じた治療が行われる(表7-4).子宮動脈塞栓術 uterinearterialembolization:UAE 子宮動脈塞栓術(UAE)は,通常,右足付け根の大腿動脈からカテーテルを表7-4■子宮腺筋症のホルモン療法薬剤特徴GnRHアゴニスト(偽閉経療法)症状は軽減し使用中は病変も縮小するが,効果の持続期間は短く容易に再燃する.レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)有意な月経量の減少,疼痛の改善,病巣の縮小が得られる.子宮筋層が非常に厚い場合には,脱出することがある.ジエノゲスト(第4世代プロゲスチン製剤)軽度の子宮腺筋症で治療効果が得られている.過多月経,貧血のひどい子宮内膜面に接するような大きな子宮腺筋症では,治療中に出血症状の増悪があるため,注意が必要である.低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)症状の軽減には役立つがまだ有用性が示されていない.11女性生殖器の疾患と看護_02部07章.indd 112019/09/18 15:46重曹扁平上皮図7-13_子宮頸部扁平上皮癌の前駆病変消退進展遷延HPV消退に伴い軽快治療が必要WHO分類(2014)従来の分類子宮頸癌取扱い規約(1997,2012)HPV持続感染LSILHSIL浸潤癌CIN1CIN2CIN3軽度異形成高度異形成上皮内癌コロサイトーシス(HPV感染細胞)核の周囲に明庭(空洞)異型細胞核の腫大,大小不同,クロマチン増量間質浸潤1/3中等度異形成基底層2/390%正常4%6%60%10%30%60%10%30%図7-13■子宮頸部扁平上皮癌の前駆病変7子宮の疾患びること,②CIN2とCIN3の診断は難しくHSILでは再現性が高いことによる.日本ではCIN3からを治療対象としてきており,当分の間はSILとCINを併記することになる.LSIL/ CIN1は,HPVに感染した状態で,軽度異形成に当たり,上皮の表層でコイロサイトーシスと呼ばれる核の周囲が明るく抜けた空洞(halo)をもつ細胞がみられる.異型細胞は基底側1/3以内にとどまり異型も軽度である.約60%は消退,約30%は遷延,約10%が進展する. HSIL/ CIN2は中等度異形成に当たり,上皮の基底側1/3を超え2/3までの範囲で異型が認められる.約30%が消退,約60%が遷延し,約10%が進展する. HSIL/ CIN3は上皮の2/3を超えて異型が認められるが浸潤はないもので,高度異形成,上皮内癌と呼ばれていた病変であり,治療の対象である. 子宮頸癌の進展様式は,子宮頸部を越えて直接浸潤すると,縦方向では腟,子宮体部へ,横方向には子宮傍組織から骨盤壁へ,前後では膀胱,直腸へと広がる.またリンパ行性に骨盤リンパ節から傍大動脈リンパ節(遠隔転移として扱われる)へ,血行性に肺,肝臓への遠隔転移がみられる.症状 子宮頸癌は,初期には全く症状がないのが特徴である.そのため検診が有効で,国の対策型検診に組み込まれており,自治体から20歳以上の女性に対して2年ごとに子宮頸部細胞診のクーポン,補助券を配布している.21女性生殖器の疾患と看護_02部07章.indd 212019/09/18 15:46予後を良好にする(表9-7).非浸潤の0期やPaget病であれば,生存率はほぼ100%である.手術後10年以内に患者全体の約3割に再発がみられる.多くは2~3年程度でみられるが,進行が遅い場合は,5年や10年,まれに20年後に再発・転移がみられる場合もある.2乳癌患者の看護 乳癌は40~60代の女性に好発し,この世代はエリクソンの発達課題の「generativity(生殖性)」すなわち次の世代の育成(育児や仕事の成果含む)の時期であり,乳癌患者の多くは家庭や社会での役割が大きい世代といえる. 乳癌患者は,他のがん患者と同様に乳癌と診断されるまでの漠然とした不安に始まり,がん告知のショック・苦痛,治療方針の選択,術前治療・手術・術後療法による変化や苦痛を味わう.それに加え,治療で停止,減速してしまった社会生活の喪失感,家族の負担感への不安や申し訳なさ,経済的な不安や苦痛,再発への不安がつきまとう. 乳癌は治療が比較的よく奏効し,5年生存率が高く,長い経過をたどることの多い疾患である.そのため長期にわたる支援が必要である.支援の必要な局面について主な4点について述べる.1意思決定の局面での支援 乳癌は多様なサブタイプをもち,患者ごとの個別化治療が基本であるが,選択肢も多い.近年,医療界ではパターナリズムからの脱却が進み,乳癌患者にも多くの場面で本人または家族の意思が問われる.乳房の切除方法(術式),再建方法(時期,手段),術前・術後の療法,支持療法の選択だけでなく,ボディイメージや社会・家庭での役割の変容を補う方法に至るまで,患者・家族は情報を理解し整理した上で意思決定や調整を求められているのであり,看護師は診断から長期にわたって慎重な意思決定支援をしていく必要がある. 現実と選択肢の受容に至るまでには個人差があり,十分な説明と同意が必要である.選択肢が二つ以上あった場合でも,特に選択肢の確実性が不十分であるときに,医療者の価値観に基づいて限られた選択肢のみを提示するのでは意思決定支援とはいえない.患者の病歴,患者の価値観や希望,社会的役割・背景などを総合的にとらえ,臨床的に実現可能で,患者自身も受け入れることのできる目標を,患者・家族・医療者の全員で考え共有することが必要となる.これを共有意思決定(shared decision making)といい,有効な意思決定支援であると考えられている.●事例で考える病みの軌跡〈動画〉コンテンツが視聴できます(p.2参照)表9-7■乳癌の病期と生存率(女性)病 期5年実測生存率*1 (%)10年実測生存率*2 (%)Ⅰ97.890.2Ⅱ93.281.4Ⅲ78.155.9Ⅳ37.415計91.178.9*1 2008~2010年初発治療症例*2 2002~2005年初発治療症例全国がんセンター協議会.全がん協加盟施設の生存率共同調査16女性生殖器_02部09章.indd 162019/10/15 16:528卵巣・卵管の疾患を切除する手術(二次腫瘍縮小手術)を行うこともある.▶化学療法 化学療法の効果判定には表8-6が適用され,卵巣がんは,化学療法が著効する腫瘍の一つである(表8-7).卵巣がんは進行癌の状態で発見されることが多く,早期癌でもしばしば再発すため,多くの症例が化学療法の対象となる. 化学療法には,治療成績の向上を目的とした初回化学療法( rst-line chemotherapy),初回手術に先だって,または試験開腹後に根治手術完遂率の向上を目的とした術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC),寛解後図8-5■良性卵巣腫瘍の腹腔鏡下手術図8-6■卵巣癌の開腹手術Ⅰ期Ⅱ期Ⅲ期Ⅳ期がんが骨盤腔を越えて,上腹部に腹膜,大網,小腸などに転移ならびに/または後腹膜リンパ節に転移がんが肝臓や肺に遠隔転移がんが骨盤内にあって,子宮,卵管,直腸などに進展あるいは転移がんが卵巣だけに限局卵巣卵管子宮直腸大動脈肺肝臓図8-7■卵巣癌の進行期別広がり型9女性生殖器_02部卵巣・卵管の疾患_08章.indd 92019/06/19 14:47女性生殖器の異常でみられる症候2月経異常11種類・定義・考えられる疾患 月経異常には,月経の開始・閉止の異常,無月経,月経周期・月経量・持続期間の異常,月経随伴症状の異常が含まれる.それぞれの異常の定義を表2-1にまとめた.1月経の開始・閉止の異常 月経の開始時期の異常には早発月経や遅発初経,閉止の異常には早発閉経や遅発閉経がある. 早発月経は10歳未満で初経が発来するものをいい,その多くは無排卵性である.早発月経には真性早発月経と偽性早発月経があり,前者は卵巣機能が早期に促進されたものであり,後者は卵巣あるいは副腎に性ステロイドホルモン産生腫瘍があり,そのために子宮出血が認められるものである1). 40歳未満で卵巣性無月経となったものを早発卵巣不全といい,高ゴナドトロピン血症性無月経を呈する.この中には,40歳未満で卵胞が枯渇し自然閉経を早発月経については5章1節参照表2-1■月経異常の種類と定義分類種類定義開始時期早発月経初経発来が10歳未満遅発初経初経発来が15歳以上閉止時期早発閉経閉経が40歳未満遅発閉経閉経が55歳以上無月経原発性無月経18歳で初経が未発来続発性無月経初経発来後に月経が3カ月以上停止月経周期希発月経月経周期が39日以上3カ月以内頻発月経月経周期が24日以内月経量過少月経月経出血量が20mL以下過多月経月経出血量が140mL以上持続期間過短月経月経持続日数が2日以下過長月経月経持続日数が8日以上随伴症状月経前症候群月経開始3〜10日前ごろから始まる精神的・身体的症状で,月経開始とともに減退または消失する月経困難症月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状20女性生殖器_01部02章.indd 202019/10/09 8:55かざして見る!写真やイラストで視覚的に理解!

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