nursingraphicus2021
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131サンプルページ家族看護学4章 家族への看護アプローチ1 家族のセルフケア支援1.家族のセルフケア支援についての考え方2.家族のセルフケアのアセスメント3.家族のセルフケアを支援するアプローチ2.家族の役割調整1.家族役割理論の考え方2.家族の役割関係についてのアセスメント3.家族の役割調整を支援するアプローチ3.家族関係の調整・強化,家族内コミュニケーションの活性化1.家族関係論,家族コミュニケーション論の考え方2.家族関係および家族内コミュニケーションのアセスメント3.家族関係の調整・強化,家族内コミュニケーションの  活性化を支援するアプローチ2.急性期にある小児患者の事例1.家族の病気体験2.家族像3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチ■ 在宅移行期にある家族3 在宅で療養する高齢患者の事例1.家族の病気体験2.家族像3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチ4.在宅で終末期を迎える患者の事例1.家族の病気体験2.家族像1375家族看護の実際る支援が必要となる.その上で,家族全体でCさんの思いや意向を理解しながら,これからの療養生活への意思決定ができるように支えていく.また,療養生活を支える上で家族と援助者が協働できるように思いのずれを修正し,家族がCさんとの残された時間を安心して,家族らしい生活を送れるように支援する.そして,いずれ訪れる最期の時に備えて,家族の凝集力を高めグリーフを助ける支援につなげたい(図5.3-1).1)家族への情緒的支援の提供 看護師は長女,長男が抱いている不安,思いを真摯に受け止め,安心して感情を吐と露ろできるように関わった.これまで長女はCさんの意向を尊重し,さまざまなことを決定してきたが,Cさんの残された時間が短いと知り,困惑し受け入れられない気持ちを少しずつ吐き出した.そして,「実●Cさんの意思表明への支援•Cさんの真の思い・ニーズを引き出す関わり•「人生における価値観」を理解し,「これまでの人生の軌跡」を振り返る作業を支援•心機能の限界•誤嚥を繰り返し,感染などで生命の危険性あり開放的ではないコミュニケーション•早く家に帰りたい•死を意識している•認知機能低下のため,自分の意思を十分に伝えることができない•母を亡くすかもしれない不安•現実の否認,逃避•父親の介護もあり,2人の介護を担う余裕,自信はない•両親ともにいつ状態が急変するかわからず,不安と恐怖を感じ,自身の将来への不安もあり•母を亡くすかもしれない不安,無力感•現実の否認,やり場のない怒り•意思決定を迫られ,困惑しているが,一人で抱え込んでいる•医療者に対する攻撃的な態度•要介護状態で十分な判断能力がない•妻を頼ってきた●家族への情緒的支援●援助者とのパートナーシップの形成•家族の体験,思いの理解●意思決定への支援●地域とのつながりの強化,関係性の修復•家族の言動の背景にある思いの共有•サポート体制の見直し•家族との協働の強化●家族関係の調整・強化●役割調整•家族全体でCさんの療養を支える体制を具体的に検討し,調整する●コミュニケーションの活性化●家族間の相互理解の促進•家族が歩んできた歴史や経験を理解することに努め,家族員それぞれが抱いているCさんへの肯定的な思いや,家族らしさを引き出す●家族への情緒的支援●家族のセルフケア能力の強化●家族教育•病気や病状についての理解を深め,現実的な家族の目標を見いだす•家族の力が発揮できるよう肯定的なフィードバックをする地域援助者の協力を最大限に得ながら在宅生活を続けてきた他家族員の参画がない長女の役割過重長女の相談相手がいない家族は医療者に対し,意見や意向を十分に表明できていない夫Cさん長男長女図5.3-1●Cさん家族の家族像とそれを踏まえた家族支援52(図2.5-1).2)Bさん家族の病気・病者・家族の様相 Bさんの1年半にわたる療養生活と現在の入院生活を妻が支え,Bさんのために力を尽くしていることから,「家族が病者を支援する側面」がみられる.しかし,妻以外の家族員の姿はほとんどみられず,家族全体がというより,妻一人が頑張っているように見受けられる.また,Bさんの病状の急激な悪化に家族全体が動揺し,否定的な感情が表面化していることで,Bさんとの相互作用に悪循環が生じており,「家族が病気や病者に望ましくない影響を及ぼす側面」がみられている.元来関係性の悪い家族ではないが,家族の強みが発揮できない状態になってしまっている(図2.5-2).3)Cちゃん家族の病気・病者・家族の様相 Cちゃん家族は,Cちゃんの療養のために家族全体が生活様式を変え,協力して取り組んできており,「家族が病者を支援する側面」がみられる.Cちゃんは全介助状態で,療養による家族生活への影響は多岐にわたるが,家族は療養を融合させた生活を5年近く送り,家族なりの生活や療養の形ができており,あまり負担とは感じていないと考えられる.また,Cちゃんを通して家族が協力し合うことで家族の情緒的きずなが強化されたこと,Cちゃんの身体状態を安定させるための観理不尽な現実への憤り病気の進行を食い止めたい衝撃動揺家族への申し訳なさ希望はもち続けたい孤立感あきらめ自責感無力感迷い,困惑負担望ましくない影響望ましくない影響食道癌,肺転移積極的治療は不可能余命月単位との宣告体調に気を配り注意を促す怒りをぶつける希望長女実母Bさん妻次女傷つき驚きをぶつけるサポート図2.5-2●Bさん家族の病気・病者・家族の様相1343在宅で療養する高齢患者の事例在宅移行期にある家族病気を抱えながらも人生の終焉を在宅で過ごしたい高齢夫婦と,悪化した病状での在宅生活に不安を抱く子どもたちとの間で,家族生活の再構築に向けた合意形成が困難になっている家族家族の紹介患 者●Cさん,82歳,女性,要介護2.慢性心不全,認知症があり,夫と共に往診医の定期的な診察を受けていた.Cさんは2年前から記憶障害,見当識障害が進行し,一人での外出,食事の準備は困難となったが,日常生活はほぼ自立していた.経 過●誤嚥性肺炎で入院となったCさんは,入院後も誤嚥性肺炎を繰り返し,胆囊炎の併発など,病状は一進一退で長期の入院となった.嚥下機能の低下も改善がみられず,経口摂取は断念して中心静脈栄養法(totalparenteralnutrition:TPN)が開始された.日常生活動作(activitiesofdailyliving:ADL)は排泄・移動に全介助を要し,ベッド上で過ごすことが多く,喀かく痰たんの自己喀かく出しゅつもできないため,口腔・鼻腔内吸引も適宜必要であった.病状は安定し,退院可能な状態となったが,主治医から「今後も肺炎を繰り返す可能性は高い.心機能も限界まできており,根本的な治療は困難なため,急変の可能性も高い」と家族に説明されている.Cさんの家族は今後の療養について検討するように主治医から勧められているが,家族内で十分に話し合うことができず,決定が困難だった.また,「こうなったのは病院の管理が悪いからではないか」と医療者を責める発言もみられ,面会は長男・長女が交代で週末に短時間来るのみで,医療者を避けている様子がある.家 族●脳梗塞の後遺症で寝たきり状態(要介護5)の夫(88歳)と長男(50歳)の3人家族である.長女(56歳)は他県に在住しており,夫(58歳)と娘2人(26歳,24歳)の4人暮らしである.Cさん夫婦の兄弟は他界しており,近くに親戚はいない.入院前,Cさん夫婦は訪問診療,訪問看護,訪問介護を利用し,一日のほとんどの時間を夫婦だけで過ごし,Cさんは夫のベッドサイドで過ごすことが多かった.Cさんは認知機能の低下はあるものの,夫の介護を献身的に行い,常に周囲を気遣いながらにこやかに過ごしていた.長女は遠方に住んでいるが,家族の窓口となり,Cさん夫婦の介護面および健康管理,経済的管理のすべてを担い,仕事を兼ねて月に1,2回はCさん夫婦宅を訪問し,数日泊まる生活を続けていた.同居の長男は転職を繰り返し,最近新しい職場に変わったばかりで外出が多い.Cさん夫婦を担当する介護支援専門員,訪問看護師,介護福祉士(以下,在宅ケア担当者)は,入院中も交代で面会に来て,Cさんを元気付けている様子である.しかし,在宅ケア担当者らは,長男,長女が威圧的な態度をとり,介護に協力的でないことや,夫婦のための新しいケア提供の提案をしても受け入れてもらえないことがあり,このままではCさん夫婦の在宅療養の継続は難しいのではないかと懸念していた.イラストを用いた解説で視覚的にも学びを促進!領域を横断した事例で理解がより深まる4.家族の対処行動や対処能力の強化1.家族ストレス対処理論の考え方2.家族対処3.家族対処のアセスメント4.家族の対処行動への看護アプローチ5.事例を用いた家族対処行動の理解5 社会資源の活用1.社会資源の活用についての考え方2.社会資源活用についてのアセスメント3.社会資源活用に向けたアプローチ5章 家族看護の実際■ 病気の急変に直面している家族1 急性期にある成人患者の事例1.家族の病気体験2.家族像3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチ3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチ■ 長期にわたり病と付き合っている家族5 長期の療養が必要な小児患者の事例1.家族の病気体験2.家族像3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチ6.精神疾患を抱える患者の事例1.家族の病気体験2.家族像3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチ■ 災害を経験した家族7 被災した家族の事例1.家族の病気体験2.家族像3.援助関係の形成4.家族への看護アプローチp.137p.52p.134

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