nursingraphicus2021
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疾患と看護の基本疾患と看護を学ぶうえで必要な基礎知識がしっかりわかる!疾患と看護をわかりやすく、臨床現場に即して理解できる工夫が満載!2部「疾患と看護」「構造と機能、症候、検査、治療・処置」1部5呼吸不全 以上を踏まえて,呼吸不全は肺に問題がなくても,中枢神経や気道,呼吸筋,循環器系統などに問題があれば起こることに注意する.急性呼吸不全2acute respiratory failure1急性呼吸不全とは 1 急性呼吸不全の病態・検査・治療 呼吸不全が短い期間で急速に発生した(進行した)ものを,急性呼吸不全という.急性呼吸不全と慢性呼吸不全は,ほかにも,PaCO2とpHとの関係性から区別できる.典型的な急性呼吸不全では,PaCO2の上昇に反応してpHが減少する.一方で,慢性呼吸不全では,PaCO2の上昇にもかかわらず,pHは7.35から7.45の間を推移する.酸塩基平衡は,呼吸のほかに腎臓でも調整が行われている.pHが正常範囲にとどまるのは,腎尿細管でHCO3-の再取り込みを増加させ,代償できているためである. 急性呼吸不全の治療では,急性呼吸不全に至った基礎疾患の治療を行う.加えて,気道確保,低酸素血症の改善,余剰二酸化炭素の排泄の三つを基本とした支持療法が必要になり,その一環として,人工呼吸管理が必要となることもある.また,ARDSなど,肺のガス交換機能が著しく障害されている症例では,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenator:EエクモCMO,図5-2)肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2) 肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)について考えてみよう.A-aDO2とは血液が肺胞の酸素をどれほど取り込めているかの指標である.肺胞に到達した酸素はすべて血液に取り込めるわけではなく,肺胞内の酸素分圧と肺毛細血管の酸素分圧には差が生じている.A-aDO2が高値を示すと,肺胞や毛細血管レベルで障害が起こっていることになる.ただし,A-aDO2の基準値や計算方法は年齢や酸素投与によっても変わるため,参考程度の評価にとどめておくのが良いと考えられる(表).表■呼吸不全の分類と特徴拡散障害シャントV/Qミスマッチ肺胞低換気酸素投与への反応+-++PaCO2の上昇---*+A-aDO2の上昇++++代表的な疾患・間質性肺炎・心疾患などの解剖学的異常・無気肺・肺水腫・肺炎・肺塞栓症・心不全・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)・神経筋疾患・気道狭窄*著明な死腔増大を認める場合には,PaCO2が上昇する. C o l u m n111医学解説呼吸様式の異常11呼吸様式の異常とは 1 異常呼吸とは 異常を知る前に,正常を知らなければならない.正常な呼吸は,吸気と呼気が一定の規則正しいリズムを繰り返す.健常人の場合,安静時の呼吸回数は毎分12~20回前後である.1回の呼吸の換気量は300~500mLで,体型などによって異なる. 異常呼吸では,呼吸量の異常,呼吸の型の異常,呼吸の周期の異常がそれぞれ混在して認められる.呼吸様式の異常を把握するには,身体診察,特に視診が有用である.患者と接している際も,注意深く観察を行う.視診でわかりにくい場合は,患者の胸腹部に手を当てると呼吸のリズムが把握しやすい.睡眠時に無呼吸を繰り返す睡眠時無呼吸症候群や換気量が低下する病態,増加する病態など,異常呼吸は幅広く認められる. 2 異常呼吸の分類 呼吸の分類を表2-1に示す.特徴的なパターンを示す異常呼吸とその原因となる疾患を,表2-2に示す.異常呼吸は重症患者,救急患者や入院中の患者に認められることが多い.異常呼吸を認めた際は,その背景にある原因疾患,病態を考える. 呼吸回数が低下することを,無呼吸,徐呼吸という.無呼吸は,一時的に10 睡眠時無呼吸症候群については,7章3節p.155参照.呼吸器の異常でみられる症候と看護2表2-1■呼吸回数の異常と1回換気量の異常分類呼吸数呼吸の深さ(1回換気量)呼吸パターン正常な呼吸正常呼吸12~20回/分300~500mL呼吸回数の異常無呼吸減少(0回/分)0mL徐呼吸減少(12回/分以下)─頻呼吸増加(25回/分以上)─1回換気量の異常低呼吸─正常より低下過呼吸─正常より増加●聴診部位と順序〈アニメーション〉● 肺(呼吸器系)の打診〈動画〉コンテンツが視聴できます(p.2参照)2014

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