nursingraphicus2021
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37サンプルページアニメーション・動画学習ポイント●事例の脳梗塞発症後の健康問題状況を簡単に説明できる.●事例から患者の看護問題(看護診断名)が列挙できる.●事例の看護の優先順位がわかる.●片麻痺,失語症によって日常生活がどのように困難な状況になるのかが考えられる.患者:Aさん,50歳,男性診断名:脳梗塞(左中大脳動脈領域)入院に至るまでの経過 ○○年1月30日の夕方,スポーツジムから帰宅後,気分が悪く,右半身にしびれを自覚したため,タクシーでD病院を受診した.その後,歩行障害が徐々に現れ始め,診察室まで車椅子で移動した.すぐに,頭部MRI,脳血管撮影,心臓超音波検査が行われた.その結果,心原性脳梗塞と診断され,ただちに入院となった.意識レベルは,GCSでE3-4・V(失語のため判定不能)・M6,血圧160/82mmHg,脈拍110回/min(不整),呼吸16回/min,右上下肢の筋力低下(MMT1/5)がみられた.●入院後の経過● 検査の結果(発症当日),血栓溶解術の適応と判断され,血管内手術による血栓溶解1脳梗塞患者の看護【事例】1事例紹介MMTmanual mascle testの略で,徒手筋力テストとも呼ばれる.臨床場面で多く用いられる筋力検査法である(表4.1-1) 1).学習ポイント●脳血管障害とはどのような状態かを簡単に説明できる.●脳出血の症状,検査,治療を簡単に説明できる.●くも膜下出血,脳動静脈奇形の症状,検査,治療を簡単に説明できる.●脳梗塞の症状,検査,治療を簡単に説明できる.●一過性脳虚血発作の症状,検査,治療を簡単に説明できる.●脳血管障害で実施する開頭血腫除去術,CEAの治療方法がわかる.1脳血管障害リンク疾病と治療 10章2〜4節●脳血管障害とはこんな疾患●脳出血くも膜下出血(1)脳血管障害とは  脳動脈が閉塞もしくは破れることで,脳に不可逆的な損傷をきたす病態.一般に脳卒中と呼ばれる.(2)主な脳血管障害  ●脳出血 ●くも膜下出血 ●脳梗塞(3)代表的な機能の障害,症状微小動脈瘤や血管壊死の破綻により,脳実質に出血する.脳動脈瘤破裂などにより,くも膜下腔に出血する.脳出血くも膜下出血脳梗塞頭痛,嘔気,嘔吐,片麻痺,四肢麻痺,意識障害,言語障害(構音障害,失語)など突然の激しい後頭部痛,嘔気,嘔吐,意識障害など(片麻痺は少ない)片麻痺,感覚障害,意識障害,言語障害(構音障害,失語),視野障害,嚥下障害など出血脳動脈瘤の破裂脳梗塞脳動脈が血栓によって閉塞し,閉塞部分から先の脳組織が障害される.梗塞巣血栓くも膜くも膜下腔4221本収録!脳・神経機能障害/感覚機能障害健康の回復と看護 ❹事例学習で臨床実践能力を養う脳槽ドレナージ,腰椎ドレナージから血性髄液の早期排除を行うこともある.あるいは輸液を増量し(hypervolemia),血液を薄め(hemodilution),血圧をやや高めに保つ(hypertension)トリプルH療法も提案されている.脳動脈の血流速度を経頭蓋ドップラー検査によりベッドサイドで連日モニターし,いち早く血管の狭窄を見つける方法もある.脳血管攣縮が疑われるようであれば,直ちにMRIや脳血管撮影を行う.軽症であれば保存的加療で,高度狭窄であれば経皮的血管拡張術やファスジル塩酸塩(エリル®)の局所動脈内投与を行う場合もある.(3)脳動静脈奇形 脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)は本来,動脈,毛細血管,静脈に分化すべき胎生期に発生する先天性疾患と考えられている.異常な血管の集合体がこの病変の本体で,ナイダスと呼ばれている.そこに流入してくる動脈を流入動脈,流出していく静脈を流出(導出)静脈と呼ぶ.脳出血,痙攣の発症によって,20~40歳代で見つかることが多いが,偶然見つかる場合もある.ナイダス内や流入動脈上に脳動脈瘤を伴うことがあり,破裂した場合にはくも膜下出血となりやすい. 脳動静脈奇形の重症度分類に,Spetzler-Martin分類がある.●検査● 脳血管撮影では,動脈相でナイダスや流出静脈が認められる.ナイダスはその形状から蜂の巣状と表現される.脳血管撮影では病変の血管構築がわかるだけでなく,流速や流量など血流動態まで知ることができる(病変部は流速が速いため無信号になa.CT:くも膜下腔に広がる出血が白 く映し出されているb.MRI フレアー(FLAIR)像:鞍上部~ シルビウス裂が高信号に認められる(○) c.MRA:左内頸動脈-後交通動脈瘤 ( )e.f.コイル塞栓により動脈瘤はほぼ閉 塞されたd.血管造影(3D画像):左内頸動脈- 後交通動脈瘤でブレブ形成あり( ) 内頸動脈撮影側面像:ネック付近から後交通動脈が分岐している( )図2.1-5●脳動脈瘤破裂に対する脳動脈瘤コイル塞栓術脳槽ドレナージ手術中に脳槽(くも膜下腔)に細いチューブを留置し,術後もくも膜下出血を頭蓋外に排液する処置.Spetzler-Martin分類大きさは3cm以下を1点,3~6cmを2点,6cm以上を3点に,周囲脳の重要性の低い部分を0点,高い部分(感覚,運動,言語,視覚皮質,視床下部,視床,内包,脳幹,小脳脚,深部小脳核など)を1点に,そして流出静脈が表在なら0点,深部なら1点の計5点満点とし,点数が高いほど外科的手術が難しいと評価する.472脳・神経系の主な疾患豊富な画像とともに臨床の最新情報を掲載疾患のポイントがひと目でわかるp.42p.47p.196※視聴方法は16ページをご覧ください

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