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43サンプルページアニメーション・動画34本収録!疾病と治療健康の回復と看護 ❼[疫 学] 2014(平成26)年の国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると,悪性新生物の死因で,胃癌は男性が第2位,女性が第3位であり,男性の消化器癌の中では最も多い死因である.男女比は約2:1で,発症年齢は70歳代が最も多い.(1)発症機序 胃癌は胃粘膜から発生する上皮性の悪性腫瘍である.発症機序は不明であるが,多段階的な遺伝子異常の蓄積と環境因子が関係している.環境因子としては,食塩の過剰摂取や喫煙などもいわれているが,最も重要なものはヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染であることが判明している.(2)分 類●組織型分類● 組織学的には腺癌であり,高分化,中分化,低分化,未分化(印環細胞癌)に分類される.未分化型はリンパ行性の転移を来しやすく,進行も早く,予後が悪い.若年者や女性での頻度がより高く,胃体部に発生したものはいわゆるスキルス胃癌となる.●肉眼型分類● 0~5型に分類される(図4.6-1)1).1~4型は従来のボールマン分類に準じており,ほとんどが進行癌である.0型は表在癌で,早期胃癌の肉眼型分類を用いて亜分類され,早期胃癌のほとんどと一部の進行癌がこの形態をとる.Ⅱc型は潰瘍を形成することによりⅢ型となり,その修復の過程でⅡc+Ⅲ型の形態をとり,さらに修復が進リンク  栄養代謝機能障害6胃 癌(gastriccancer)1疾病の概念スキルス胃癌低分化癌の一種で,癌細胞に対し間質結合組織の量が極めて多い特徴がある.粘膜表面に変化を生じないまま胃壁内を浸潤するため,発見が遅れやすい.早期胃癌癌の浸潤が粘膜内か粘膜下層までにとどまるもので,リンパ節転移の有無は問わない.図4.6-1●胃癌の肉眼型分類腫瘤型潰瘍限局型潰瘍浸潤型びまん浸潤型1型2型3型4型5型分類不能隆起型0型(表在型)の亜分類0-Ⅰ型0-Ⅱa表面隆起型0-Ⅱb表面平坦型0-Ⅱc表面陥凹型陥凹型0-Ⅲ型0-Ⅱ型表面型粘膜層(M)粘膜下層(SM)固有筋層(MP)● 胃の構造〈動画〉92国試必須の疾患をピックアップ第10章●神経・筋疾患脳腫瘍/高血圧性脳出血/くも膜下出血/虚血性脳血管疾患/髄膜炎/パーキンソン病/重症筋無力症/アルツハイマー病/てんかん第11章●自己免疫疾患,アレルギー疾患,免疫不全関節リウマチ/全身性エリテマトーデス/後天性免疫不全症候群/川崎病第12章●感覚器疾患白内障/緑内障/網膜剝離/中耳炎/副鼻腔炎/メニエール病第13章●感染症水痘,帯状疱疹/麻疹/風疹第14章●精神疾患統合失調症/うつ病,抑うつ状態た,腸管粘膜の血管透過性亢進により,腸管内の細菌やエンドトキシンの吸収が考えられるため,抗菌薬の投与を行うこともある. 以上の治療で症状の改善が認められなければ,手術が行われる.しかし,手術で癒着を解除しても新たな癒着を生じ,イレウスを再発することがある.手術の適応を十分に検討する必要がある.●複雑性イレウス● 複雑性イレウスでは急速に病状が悪化するので,原因と血行障害の部位を確定し速やかな血行再開を期待した治療を行うため,緊急手術が必要である(図4.19-5).ショック状態に陥る場合もあるので,適切な術中術後管理,特に水分と電解質管理が必要である.また,広範囲の小腸の壊死が認められ,その小腸が切除された場合は短腸症候群となり,特別な栄養管理を必要とすることもある.●麻痺性イレウス● 腹膜炎などの原因疾患の治療が優先される.開腹術後の中枢神経系異常では,腸蠕動促進薬(ジノプロスト,メトクロプラミド,パンテノール)の投与,胃管や浣腸による腸管内の減圧を行う.●痙攣性イレウス● 原因疾患の治療と鎮痙薬(ブチルスコポラミン臭化物,アトロピン)の投与を行う.イレウスに伴う症状を緩和し,全身管理を行う 症状に関する訴えをよく聞き,患者の苦痛を理解する.腹痛や腹部膨満の軽減には,セミファーラー位など安楽な体位の提供,温おん罨あん法ぽうが有効である(炎症の強い複雑性イレウスでは,温罨法,マッサージは禁忌である).脱水や電解質異常を改善するために輸液が行われるので,ヘマトクリット値,電解質(特に低カリウム血症),尿量・尿比重などの変化に注意し,輸液管理を行う.また,全身倦怠感や脱力感が認められる場合は,日常生活の援助を行う.イレウス管が挿入された場合は,挿入に伴う苦痛を緩和する イレウス管の留置は苦痛を生じるため,患者の協力が不可欠である.よって,まず患者がその必要性を理解できるよう説明する.また,イレウス管は経管栄養チューブや胃管に比べて太いため,鼻腔の痛みや咽頭の不快感,鼻翼への接触による皮膚潰瘍が生じやすい.これらを予防するためには,鼻翼に負担がかからないようにイレウス管を固定する.定期的な固定位置とイレウス管の長さの確認,鼻腔周囲の状態の観察も必要である.咽頭の不快感に関しては,絶食中で口腔内の自浄作用も低下している短腸症候群腸が短い状態で栄養障害を起こす小腸の機能障害をいう.小腸から栄養を吸収するには小児で30cm,成人で50cmの長さの小腸が必要であるが,これより短いと栄養を吸収することが難しくなる.栄養状態をアセスメントし,経腸栄養,中心静脈栄養などが必要となる.3ナーシングチェックポイント吸引孔先端側孔後方バルーン前方バルーン吸引側孔空気弁バルーン用バルブ図4.19-4●イレウス管阻血状態の小腸が放置されると壊死を起こすため,緊急手術が必要である.絞扼のもととなった癒着小腸阻血状態の小腸腸間膜図4.19-5●複雑性イレウスの術中写真132看護のポイントを掲載※視聴方法は16ページをご覧くださいp.319(3)治 療 現在,白内障を治療する点眼薬や内服薬はないため,治療には手術を行う.一般的には水晶体超音波乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)が行われている.約2mmの強膜切開創から器具を挿入し,超音波により水晶体核を破砕・吸引させて,水晶体囊内にフォルダブル(折りたたみ)眼内レンズ(IOL)を挿入する(図12.1-3).小切開創で行われるため,無縫合で手術を終了でき,施設によっては日帰り手術が可能である. 水晶体核の硬さによりPEAの適応を決定する.核の硬度分類はその色調によりgrade0(soft):透明,grade1(semi soft):淡黄,grade2(medium):黄色,grade4(hard):琥珀色(図12.1-4),grade5(rock hard):茶~黒色に分けられる.一般的にはgrade4までがPEAの適応となる. 現在,白内障手術時に用いられる眼内レンズは,一定距離に焦点の合う単焦点レンズが一般的である.しかし近年,遠方および近距離に焦点の合う多焦点レンズが開発され,先進医療(手術費,眼内レンズ費は自己負担)として使用されている. 白内障術後は,特に感染に注意する.多くの施設で,感染予防のため術前から抗菌薬の点眼薬を処方するが,その際,正しく点眼されているか,必ずチェックする.通常,手術は無縫合で終えるため,上眼瞼を押さえると創が開き,感染につながる危険性がある.術後は上眼瞼を押さえず,点眼瓶の先端がどこにも触れないような正しい点眼方法を指導する. また術後眼内炎は,手遅れになると視力が回復しない場合もあり,早期に発見し,適切な治療を直ちに行う必要がある.入院・日帰り手術いずれの場合も,術後に視力低下,眼痛,充血の悪化といった症状があれば,すぐ受診するよう指導する.3ナーシングチェックポイントトーリック眼内レンズ乱視矯正用眼内レンズ.白内障手術の際,眼鏡のように乱視を矯正できる.2009年から日本でも保険適用となった.角膜の形状によっては適さない場合もあるので,術前の精密検査が重要である.術前に患者が座位の状態で角膜に基準点となるマークを入れる処置を必要とする.①核分割用スパーテル(➡)と超音波チップ(➡)を挿入して水晶体核を分割する.②インジェクター(➡)にフォルダブル眼内レンズ(➡)をセットし,囊内に挿入する.③インジェクター(➡)から抽出された眼内レンズ(➡)が囊内で広がる.図12.1-3●水晶体超音波乳化吸引術(PEA)核の色調が琥珀色になっている.図12.1-4●核硬度分類4~5の白内障31912感覚器疾患豊富な画像で理解を促すかざして見る!

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