nursingraphicus2021
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59サンプルページアニメーション・動画読での指摘と自分の採用した方法論などを比較し,より適切な方法を採用することで科学的な論文が執筆されることになります. また,専門性の高い査読者の視点から,研究者が意図しなかった重要な課題の発見,収集したデータの再分析による新たな知見の発見,研究結果からの新たな課題などが得られる可能性もあります.スーパーバイズを受けるコツ❸ ときには場所を変えてみよう 研究室や会議室では,緊張して自由なディスカッションが難しいなと感じたことはありませんか? そんなときは場所を変えて,勉強会やディスカッションを行うことを提案します.私の経験では,先生にも参加していただいて,温泉で合宿し,それぞれの研究の状況を発表し合ったり,ディスカッションしたりしました.パソコンとプロジェクターを持参して,部屋の鴨居にシーツをかけて簡易スクリーンを作り,深夜までディスカッション.合間には温泉に浸かり,おいしいものを食べて気分転換しながら,再びディスカッション. 活発な意見交換ができ,大変効果的でした.894事例研究の進め方Ⅰ.研究の意義・目的ALS発語・ボディーランゲージができない言語・非言語コミュニケーションの障害重度コミュニケーション障害意思伝達装置導入使いこなす人使いこなせない人この違いは何か?Ⅱ.研究方法研究デザイン:意思伝達装置使用促進要因と抑制要因を明らかにする関連要因探索型質的研究研究方法:1)調査期間:〇〇年7月~10月2)対象者:意思伝達装置を使用した経験のある在宅ALS療養者で,研究協力に同意の得られた者5名とその家族3)調査方法:半構成的面接法4)調査内容:①対象者の概要,②意思伝達装置導入から現在に至るまでの過程,③生じている問題と解決方法,④使用の効果,である.5)分析方法:得られた資料を時系列および生じた問題ごとに分類・整理し,装置使用に関連する促進要因と抑制要因について分析した.6)倫理的配慮:調査データは個人が特定されないように配慮した.Ⅲ.結果1 対象者の概要と意思伝達装置使用の効果A氏B氏C氏D氏E氏性・年齢療養場所同居者使用機種利用制度申請期間導入時の使用状況使用の効果(ナラティブ)導入の経過装置導入時期男性・60歳代男性・50歳代女性・60歳代男性・70歳代男性・60歳代自宅施設自宅自宅自宅配偶者・子ども配偶者・子ども配偶者・子ども配偶者単身1~2ヶ月2ヶ月12ヶ月3ヶ月24時間/日15時間/日6時間程度孫が来た時30~60分/日人工呼吸器装着後人工呼吸器装着後人工呼吸器装着後人工呼吸器装着後人工呼吸器装着後「伝の心」「伝の心」「伝の心」「伝の心」「伝の心」配偶者の積極的な支援により導入ケアマネージャーに勧められ導入リハビリスタッフに勧められ導入本人が新聞で情報を得て希望し導入保健所保健師に勧められ導入難病患者等日常生活用具給付事業難病患者等日常生活用具給付事業難病患者等日常生活用具給付事業難病患者等日常生活用具給付事業日本ALS協会A県支部から借用日常会話,文章保存,メール,環境制御装置として使用日常会話,身体状態を伝える時に使用操作訓練のために使用(使用中は日記を綴っていた)配偶者に苦情を伝える時に使用孫たちとの交流時に使用もっと生きてみよう,生活を楽しもう施設生活が可能となり,外出や交流をしたい日記を綴ることで楽しみができた苦情を伝えることで,気晴らしができた可愛がっている孫たちと交流できた結果2 生じている問題と解決方法A氏B氏C氏D氏E氏生じた問題と解決方法使用状況スイッチの種類や操作部位の変更姿勢の調整画面を見る主電源の入力故障時の対応操作練習使用意欲使用している使用している使用中断使用中断使用中断変更検討中変更できない変更できない変更できない作業療法士が変更必要時に配偶者やケア提供者が対応必要時に職員が対応病院:作業療法士在宅:支援者なし身体機能低下により保持できない病院:支援者なし在宅:支援者なし身体機能低下により保持できない支援者なし画面と眼鏡の調整電源を24時間接続子どもが対応し使用継続できた独力で毎日練習日常生活や趣味,情報収集・発信に使用し意欲がある施設生活で使用し意欲がある病院:日記をつけることに意欲があった在宅:交流対象の減少,意欲喪失妻に苦情を伝えることに意欲があった在宅:認知機能の低下孫たちと交流することに意欲があった情緒不安定作業療法士,言語聴覚士から訓練作業療法士から訓練習熟には至らず業者の個人的支援習熟には至らず装置設置時練習習熟に至らず職員が対応し使用継続できた故障経験がない配偶者が対処できない配偶者が対処できない職員が定時接続病院:作業療法士在宅:支援者なし在宅:配偶者病院:支援者なし配偶者画面調整目の疲労が著しく画面を見られない眼瞼下垂のため画面を見られない画面調整できない①③④②在宅ALS療養者へのコミュニケーション支援に関する研究(公開発表)図5-2●在宅ALS療養者へのコミュニケーション支援に関する研究(公開発表)1●事例研究の実際〈動画〉975事例研究の実際4本収録!看護研究基礎看護学 ❹研究を進めるためのアドバイスも掲載※視聴方法は16ページをご覧ください 例えば,筆者の研究では,「顔色と疲労に相関があるかどうか」,「効果的な健康教育はどのようなものか」などがあります.このような疑問を解決するためには,顔色を変化させている疲労とは何かから疑問が始まり,疲労となる生活行動(例えば「睡眠不足」など)を負荷していくのかを検討する,健康教育を厳密に計画し実施するために介入方法を考案するといったことが重要です.特に,前者の例では疲労を負荷していくわけですから,研究の倫理的配慮から実施できない部分が多くあります.●介入群と非介入群● 実験研究,準実験研究には,二群間での介入効果を比較し,介入の有効性を評価するものもあります(図2-3). 介入を行うグループ(物,個人,集団)を介入群といい,介入しないグループを非介入群(コントロール群)といいます.介入した結果,どのような効果があったかを知る場合には,介入群と非介入群の結果を比較します.人は家族構成や価値観の違いなど,複雑な環境の中で生活しており,これらの要因を考え合わせて対象を選定するには,条件設定をよく考える必要があります.例に挙げた「健康教育の効果」の研究では,健康教育に参加するのは健康に関心のある人が多いと考えられ,バイアス(偏バイアス選択バイアス:母集団に偏りがあること.研究目的にマッチしない対象を調査してしまうこと.測定バイアス:測定する機器,あるいは調査項目などに信頼性,妥当性を欠いてしまうこと.キーワード:操作,対照群(コントロール群),無作為抽出操作する(条件を加える)実験群(介入群)結果および効果コントロール群(非介入群)無作為抽出図2-3●実験研究の経過とポイントわからないときは文献で調べよう.ヒントはないかな?どの変数が一番影響があるのだろう?は変数なんだ!高血圧運動量塩分摂取量食物繊維独立変数従属変数図2-2●実験研究における変数ホーソン効果実験することを,研究に参加する人が無意識のうちに意識してしまい,正しい結果が出ないこと.30研究の考え方や進め方を学べる実際の研究の例を掲載p.30p.97かざして見る!

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