nursingraphicus2021
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67サンプルページアニメーション・動画きるようになる. サイン・マネジメントは,体重,血糖値,血圧などを自分でモニタリングして,その変化を自分で把握し,対処法を決定する指標にしていくことである.外来等では,医師や看護師にセルフモニタリングの状況を提示して,一緒に考えていく材料にする.慢性病の場合には,自覚症状が少ないことから何らかの数値をモニタリングすることでセルフマネジメントの評価をすることが多い. ストレス・マネジメントは,ストレスの原因となるストレッサーが何かを自覚し,ストレスとうまく付き合っていく方法を身に付けることである.方法としては,①ストレッサーを減らす方法を考える,②ストレッサーの受け止め方を変える,③ストレスの対処方法を変える,④ソーシャルサポートを活用する,がある. 慢性病をもつクライアントは,症状マネジメントの能力とサイン・マネジメントの能力を高めるとともに,ストレス・マネジメントの能力を身に付けることにより,セルフマネジメントできるようになっていく. さらに病院受診の際に,自分の病気の進行状況のマーカーとなる検査データを教えてもらい,把握しておくことは,セルフマネジメントを進めていく上で重要なことである.ソーシャルサポート社会的関係のなかでやり取りされる支援のことであり,その内容によって次のように分けることができる.情緒的サポート(共感や愛情の提供),道具的サポート(形のある物やサービスの提供),情報的サポート(問題の解決に必要なアドバイスや情報の提供),評価的サポート(肯定的な評価の提供).図1-4●セルフマネジメントの概念図セルフマネジメント症状(体験,自覚)やセルフモニタリングの情報専門知識・技術の提供治療,薬剤処方などパートナーシップ医療機関での測定検査データ自宅での測定(セルフモニタリング)体重,腹囲,尿量,血糖値          など痛み吐き気食欲不振便秘下痢腹部膨満感息切れ発熱めまい倦怠感不眠…など医療者・専門知識からの推測・経過予測などクライアントシンプトン・マネジメントサイン・マネジメント共同ケア自分の症状(シンプトン)と生活のなかで折り合いをつけて付き合っていく方法を身に付ける.ストレス・マネジメントストレッサーが何かを自覚し,ストレスとうまく付き合っていく方法を身に付ける.①ストレッサーを減らす 方法を考える②ストレッサーの受け止 め方を変える③ストレスの対処方法を 変える④ソーシャルサポートを 活用する客観的に測定,観察できるデータや徴候(サイン)の意味をアセスメントし,対処する方法を身に付ける.211セルフマネジメントとは 以下は,外来の処置室での会話である. しょんぼりとして今にも泣きそうな表情である.表情や言動からインスリン注射を十分に受け入れられていないことが考えられる.このままインスリン注射について説明しても聞き入れられる状態ではないし,家に帰ってから注射できるかどうか不安である.クライアントの気持ちを聞くことにする.2糖尿病をもつクライアントのセルフマネジメント事例1援助者としての役割の明確化2生活者としてのクライアントの物語を聴く●看こんにちは,鈴木さん.はじめまして,看護師の田中です.インスリン注射の説明にまいりました.●鈴こんにちは.こんなことになって情けない.悪くなっているような気がしたけど,注射するとは思わなかった.やっぱり来なかったほうがよかったな.どうしても注射しなくちゃいけないかしら.怖くてできない.家に帰ったら絶対できない.事例鈴木さん,53歳,女性,無職 糖尿病外来に通院しているが,二度も治療を中断した経験のある鈴木さんがインスリン注射を開始することになり,インスリン指導を医師から依頼された.鈴木さんは現在,夫と二人暮らし.5年前に会社の健康診断で糖尿病と診断され,2週間の教育入院をして以来,糖尿病外来に通院していたが,無断で半年以上の中断が2回あり,そのつど血糖コントロールが悪化している.教育入院後,HbA1cは6.4%(NGSP値)であったが,本日の外来受診時に11.0%と上昇しており,口渇と頻尿,3kgの体重減少がみられた.身長155cm,体重52kg.1カ月前から足の裏の痛みが出現している.7糖尿病とともに生きるセルフマネジメント支援 健康教育は看護師,保健師,医師,栄養士など多くの専門職により実施されている.専門職による健康教育の方法はいくつかあり,自己効力理論に基づく援助方法はその一つとして挙げられる.ここでは,健康教育の担い手である指導者としての看護師の自己効力に焦点を当てて述べる. 成人看護学の領域においても,対象者への効果的なケアを目指す支援の一つとして,自己効力の看護場面への適用の有効性が検討されている 9-13).特に健康教育や患者教育といった看護場面において,より教育効果を上げるためには,対象者の自己効力を高めることが有効とされている.このように対象者の自己効力に着目し,直接的な介入によりケアの効果を上げることは重要である.しかしながら,近年,指導者である看護師の自己効力についても研究がなされるようになった 14, 15). その理由として,一つ目に,看護師が自己効力を高くもつことは,不安や自信のなさをコントロールするだけでなく,ひいてはケアを受ける対象者への良質なケアをもたらす可能性が高いと推測されること.二つ目に,対象者の自己効力を高めるためには,指導者である看護師が自らの自己効力を高める実践方法を理解しておく必要があることが挙げられる.つまり,看護師が自らの自己効力の程度を判断できずコントロールするのが難しければ,自己効力を高める方法を対象者に教えたり,理論に基づくケアは困難と考えられるからである.これらのことから,指導者の自己効力とは,看護を行う際に必要な看護師自身の自己管理能力の一つであるといえる(図3.3-4). また,人間的な相互作用のプロセスを通して,患者が病気の治癒に向けて,自ら意欲をもてるように成長するとき,看護師は広い意味で患者の健康に関して,教育的役割を果たしている 16)という.対象者の自己効力を高める看護や健康教育を行うためには,まずは,看護師が自身の自己効力について理解しておくことが前提として挙げられる.3指導者の自己効力1指導者の自己効力とは図3.3-4●看護師が対象者の自己効力を四つの情報源を通じて高める健康教育看護師の自己効力対象者の自己効力健康教育看護師は対象者が四つの情報源(遂行行動の達成,代理的経験,言語的説得,生理的・情動的状態)を通して自己効力を高めていくことができるように健康教育を行う.遂行行動の達成代理的経験言語的説得生理的・情動的状態遂行行動の達成代理的経験言語的説得生理的・情動的状態6213本収録!セルフマネジメント成人看護学 ❸第12章●慢性心不全とともに生きるセルフマネジメント支援慢性心不全とはどのような状態か/慢性心不全をもつ人に必要とされるマネジメント/慢性心不全のクライアントのセルフマネジメント事例/コラム:虚血性心疾患治療薬の使用方法と効果第13章●エイズとともに生きるセルフマネジメント支援エイズ(AIDS)の理解/HIV感染症ならびにエイズとともに生きる人々の看護とセルフマネジメント/エイズのクライアントのセルフマネジメント事例第14章●難病とともに生きるセルフマネジメント支援筋萎縮性側索硬化症に関する知識/筋萎縮性側索硬化症をもつ人への一般的対応/筋萎縮性側索硬化症のクライアントのセルフマネジメント事例第15章●死が近づいた人のセルフマネジメント支援終末期とはどのような時期か/「緩和ケア」「エンドオブライフケア」とはどのようなことか/スピリチュアルペイン(spiritual pain)/セルフマネジメントに沿った看護/「いのち」「生」の意味※視聴方法は16ページをご覧くださいセルフマネジメントの概念を図解事例学習で臨床実践能力を養う理論を図解し理解を促すp.21p.109かざして見る!

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