nursingraphicus2021
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71サンプルページアニメーション・動画や日々のミーティングなどは看護師からの情報発信のチャンスとなることが多い.●看護師と介護士間の連携● 看護職と介護職は一つのチームとして活動している場合が多い.基本的なケア自体はすべての職種から共通なこととして患者に提供されるが,介護士が行うケアは,より家族に近い立場からの援助や,入院生活を心安まるものにする工夫など,患者がより豊かな日常生活を送れることを目指して行われる.一方,看護師には,介護士の独自性を生かした活動をチームに反映できるようなサポートが必要とされる.また,病棟運営会議は季節の行事や夕食後の時間の使い方を話し合うなど,介護士の意見や発想を取り入れる機会となる(チーム連携).●情報共有の場● 情報が一元化された診療録や,双方向のコミュニケーションを支援するITネットワークなども情報共有の場である.電子カルテの普及により,患者について多くの情報を共有しやすくなった.近年,施設によってはナースステーションがスタッフステ介護士介護福祉士,ケアワーカー,看護助手など,施設によって名称が異なる.入院・情報収集各専門職での評価予後予測・目標設定リハビリテーション総合実施計画書作成患者家族面談・目標共有治療・看護・訓練・ソーシャルワーク実施各専門職での評価予後予測・目標再検討リハビリテーション総合実施計画書作成患者家族面談・目標共有治療・看護・訓練・ソーシャルワーク実施各専門職での評価 家屋評価最終評価・目標確認退 院 入院時カンファレンス退院カンファレンス評価カンファレンスのメンバーに加えて地域スタッフ(ケアマネジャー,訪問看護師)が参加する.各専門職の評価や報告,映像による評価をもとに検討する.参加メンバーは医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,社会福祉士など.参加メンバーは医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,社会福祉士など.移動の場面以外に,食事や洗面,排泄場面などの実際をチームで検討する(食事場面には栄養士も参加.排泄場面は限られたメンバーのみ).その結果,嚥下造影や食形態のオーダーが出たり,どの職種がどのように関わるか,さらに検討が行われる.評価カンファレンス図4.3-1●リハビリテーション病棟における入院から退院までのプロセス66p.66●片麻痺患者がベッドから車椅子に移乗する際の援助を例に(1)主体性回復への支援情緒的安定を図る…(大変さ,困難さへの)共感,励まし,承認自己決定を助ける…動作介助の必要の有無を確認自己効力感を高める…成功体験ができるように関わる.患者のペースに合わせて待つ.(2)安全・安楽の確保身体の調整意識麻痺側への注意,両足の位置・フットレスト・左右のブレーキの確認などを促す.耐久性移乗前後の呼吸・循環状態の観察姿勢・バランス重心移動を促す,膝折れ予防,座位姿勢の安定を確認環境調整道具・設備・しつらえ・工夫スペースの確保,ベッドの高さの確認,車椅子は非麻痺側(ベッドに対して45°)に配置する,ブレーキに目立つ印をつける.(3)代償機能の活用人介助量・できない部分を介助する.・座り直すとき,介助者は麻痺側を介助する.また,立位と同時に膝と腰を支持する(膝折れ予防).援助者安定するまでは看護師が行う.物自助具など動作手順を掲示する(記憶の補助).装具処方されている装具の使用(プラスチックAFO,p.199のプラスα参照)機器ベッド柵,車椅子(4)ADL支援の学習プログラム(スキル・手順) ①麻痺腕を腹部の上に置き,側臥位になる. ②非麻痺足で麻痺足をすくうようにしてベッドの端に出す. ③非麻痺側肘を立てるようにして体を起こし,肘を上げ,反対の手で床を押して起き上がる. ④端座位を保つ.※ベッド柵は非麻痺側 ⑤非麻痺上肢で車椅子の遠いほうのアームレストをつかむ. ⑥アームレストを押し下げるようにして支え,体を前に出しながら立ち上がる. ⑦非麻痺下肢を軸に回転し,向きを変える. ※体は前屈のまま ⑧体軸を十分に前傾させてから,ゆっくり車椅子に座る. ⑨車椅子に座り直し,座位姿勢を安定させる. ⑩麻痺足をフットレストに乗せる. ⑪左右のブレーキを確認する.●提示方法:慣れるまでは実施前,動作ごとに口頭でタイミングよく指示●時間・回数:ベッドから下りるとき,毎回   右片麻痺の場合左片麻痺の場合麻痺側麻痺側ベッドベッド車椅子は,ベッドに対して30~45度にし,患者の健側に配置する.30~45°(5)健康維持鎮痛薬の投与時間調整,リラクセーション,温浴などによる痛みの緩和睡眠不足,エネルギー不足,活動量増加に伴う疲労を予防血圧や血糖などの症状コントロール ②③⑤⑧表7.3-5●移乗の学習支援計画2017生活の再構築へのアセスメントと援助47本収録!リハビリテーション看護成人看護学 ❺●活動と参加● 自己の置かれた状況の認識や,疾患や治療に対する知識も不十分であることなど,心理的エネルギーの問題から,心臓リハビリテーション活動に参加する動機づけができていない.この状況では効果的なリハビリテーションを行えない可能性がある.●背景因子● 再発を予防するためには,冠危険因子を是正する必要がある.そのためには,生活パターンの変更を余儀なくされるが,仕事を中心とした価値観を表す患者の発言からは,積極的に生活習慣を変更・維持していくことが困難であると考えられる.(2)看護問題 アセスメントの結果,以下の問題を抽出した.問題の背景を関連図(図8.2-2)に示す.#1 心機能低下に関連する身体活動時の心臓組織循環減少リスク状態#2 生活習慣の改善が困難なことにより再発の危険性がある目標/期待される成果#1 deconditioningを生じない2介入計画CCUcardiac(もしくはcoronary,critical) care unit.冠状動脈疾患集中治療室.心筋梗塞や不安定狭心症,心不全や大動脈解離などの集中治療を行う急性期病棟のこと.左室駆出率left ventricular ejection fraction:LVEF.左室から一回の拍出によって出せる血液量の割合のこと.基準値は50%以上であり,健常者では60%以上を示すことが多い.数値が低いほど心筋の機能が低下していることを意味している.情 報アセスメント心身機能と身体構造・突然,激しい胸痛を感じて救急外来を受診した.・急性心筋梗塞と診断され,カテーテル治療が行われた.・発症から4時間後に再灌流が図られた.・CCU入室時のバイタルサイン 体温 36.0℃,血圧 118/56mmHg,脈拍 76回/min,SpO2 97%・CCU入室時のスワンガンツカテーテルのデータ CI 2.4L/min/m2,PAWP 16mmHg・カテーテル治療翌日の心エコー所見では,心筋壁運動は改善傾向にあるものの,左室駆出率(LVEF)40%である.活動と参加・CCU入室後,安静の必要性を説明しても「痛みもなくなったし,もう元気になったから動いても大丈夫.歩いていいかな」と発言し座位になろうとするのを看護師が制止する状態であった.・運動療法開始時は「普段から運動は嫌いなほう.心臓とこんな運動がどのように関係するのかな」などの発言がある.背景因子・5年前の健康診断で高血圧,脂質異常症,肥満を指摘され治療を勧められていたが放置していた.・食生活は仕事の都合から外食が多く自宅でとることは少なかった.・20年前から1日に20本以上の喫煙習慣があった.・ほぼ毎日,酒5合程度を摂取していた.・生活習慣を改善する必要性についてBさんと妻に説明すると,Bさんは硬い表情で「大変そうだけど,自分にできるかな」と不安気に話した.・入院時Bさんは「仕事一筋でやってきたから体のことなんか気にしたことがなかった.まさか自分がこんな病気になるなんて」と動揺した様子であった.・閉塞した冠動脈に対して早期再灌流が図られていることから,梗塞領域の心筋は壊死には陥っておらず,気絶状態(気絶心筋)の可能性がある.・フォレスター分類Ⅰ群(p.90参照)であり心不全はきたしていないが,心機能障害が認められる.・急激な発症で身体的な不快感や違和感も消失したことから,自己の置かれた状況を十分認識できていない.・疾患や治療に対する知識が不十分である.・既往症や生活習慣において急性心筋梗塞の代表的な冠危険因子(p.88参照)が存在し,仕事中心に物事を考える現在の価値観のまま生活習慣が是正されなければ,再発の危険性がある.図8.2-1●ICFの枠組みを用いた情報の整理とアセスメント2198事例で学ぶリハビリテーション看護 2…急性心筋梗塞患者の看護8チーム医療の視点を重視p.219事例学習で臨床実践能力を養う※視聴方法は16ページをご覧ください

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