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75サンプルページアニメーション・動画しかし,後期高齢者になると,老化現象が顕在化してきたり,病気になる比率も高くなるため,生活機能が低下し要介護となる人が増えるのである.(2)要介護高齢者がいる家族 図2.1-8は,要介護者のいる世帯の世帯構造別にみた要支援・要介護度の構成割合である. 単独世帯では,要支援1が21.5%,要支援2が19.8%,要介護1が20.4%で,要介護度が低い人が約6割である.単独世帯,つまり高齢者の一人暮らしでは,要介護2(起き上がり,入浴や排泄に一部介助が必要)以上では自宅で暮らすことが難しくなるということである.それに対し三世代世帯では,要介護2が23.2%で最も多い.ほかに,要介護3が17.9%,要介護4が6.6%,要介護5が5.9%であり,ほかの世帯よりも要介護度の高い人の割合が高い注)2006(平成18)年4月より,介護保険法の改正に伴い,要介護度の区分が変更されている.厚生労働省.平成30年度 介護保険事業状況報告(年報).(年)要支援    要支援1   要支援2   経過的要介護   要介護1   要介護2   要介護3要介護4   要介護55000(千人)1,0001,5002,0002,5003,0003,5004,0004,5005,0005,5006,0006,50020013858485363733763602,87720003186804613413513212,47120024931,0226054084053903,32420035845674664574321,1983,70420044434765015826591,2823,94320057061,3746165315044454,1752006467526620717868454905194,25120075416067686795564797484,3784,378220094,6964,69659163182581668860753820104,9074,90765264788286267561956920084,5244,52456263976478770956949420125,4575,4575906747229561,0201,02074475120145,9185,9185847107711,0291,0291,1471,14781885920156,0686,0685847287911,0511,0511,1981,19883987720176,2826,2825837708341,0971,0971,2721,27286186620186,4536,4535857868491,1101,1101,3021,302905915図2.1-6●第1号被保険者(65歳以上)の要介護度別認定者数の推移05001,0001,5002,0002,5003,0003,5004,0004,500厚生労働省.平成30年度 介護保険事業状況報告(年報).要支援要介護要支援要介護前期高齢者(65~74歳)後期高齢者(75歳以上)2354951,5854,135(千人)(%)2520151050総数(人)割合図2.1-7●前期高齢者と後期高齢者の要介護等認定の状況852高齢者をとりまく社会19本収録!高齢者の健康と障害老年看護学 ❶国試必須の統計データが満載 人間は細胞の分裂と増殖を繰り返し,身体器官を成熟させる.細胞分裂のたびに染色体の先端部分にあるテロメアが短くなり,ある短さになると細胞分裂ができなくなり,細胞は死滅する.そのため,加齢とともに細胞分裂の回数は減少し,身体の生理的機能も徐々に衰えていく. 加齢とともに生体機能は低下するが,低下する速度は各生体機能によって異なる.腎臓や肺の機能は加齢とともに低下するスピードが速くなるが,神経伝達速度は緩やかに低下する. 高齢者は,低下する機能と上手に付き合いながら日常生活を送っている.また,今までの生活環境が生体機能に大きく影響を及ぼしているため,加齢変化の個人差も大きい.そのため,一般的な身体機能の加齢変化を踏まえながら,高齢者個人の低下した機能,残存している機能を考慮し,高齢者の生活を考えることが重要である.(1)循環器系の変化●心 臓● 高齢者では,心機能の予備力が低下する.安静時の心拍出量では明らかな加齢変化はみられないものの,運動負荷時には最大心拍数と1回拍出量が減少し,心拍出量が減少する(図1.5-1).そのため,めまいやふらつきなどの症状が出現しやすい.高齢者が不整脈を生じやすいのは,刺激伝導系の線維化による刺激発生機能の低下が原因である.刺激伝導系の線維化や弁の開閉不十分(特に高い圧にさらされる大動脈弁と 5加齢に伴う変化 1身体機能の生理的変化1分間の心拍出量心拍出量=1分間の心拍数×1回の拍出量.心筋細胞の老化左室のコンプライアンス低下左心室肥大心筋の弾性線維の減少コラーゲン線維の変性アミロイドの沈着心拍数の反応低下(洞結節)βレセプターの加齢による身体機能、心理・精神機能、社会的機能の変化がわかる!※視聴方法は16ページをご覧ください●プログラムの対象と目的●〔対象〕要支援・要介護のリスクが高く,転倒,認知症,閉じこもりなどの兆しがみられる65歳以上の高齢者.2介護予防プログラムに参加した後期高齢者の事例事例2 Qさん(女性,77歳)は,娘夫婦,孫との4人暮らし.大事な約束を忘れたり,同じ話を何度も話すことはあるが,掃除と炊事はQさんが引き受けて忙しく過ごしていた.ある日,庭の掃除中に転倒し,橈骨遠位端骨折を負った.骨折から3カ月目に,外来に付き添ってきた娘から「骨折以来,一日中ぼんやりして,自分の部屋にこもっている」という情報があった.外来の看護師は,Qさんがフレイル状態にあるとアセスメントし(表5.5-1),Qさんに了解をとって地域包括支援センターの保健師に連絡した. 保健師はQさん宅を訪ねた.保健師は市の介護予防プログラムを勧めたが,Qさんは「大けがをした私にはとても無理」と断った.しかし,かかりつけ医から「骨折は順調に治癒しているので,介護予防プログラムに参加して大丈夫.骨折後の患者の多くがプログラムに参加している」と勧められ,参加を決意した.表5.5-1●後期高齢者の質問票(Qさんの結果)類型名No質問文回答健康状態1あなたの現在の健康状態はいかがですか①よい  ②まあよい  ③ふつう④あまりよくない  ⑤よくない心の健康状態2毎日の生活に満足していますか①満足  ②やや満足  ③やや不満  ④不満食習慣31日3食きちんと食べていますか①はい  ②いいえ口腔機能4半年前に比べて硬いものが食べにくくなりましたか※さきいか,たくあんなど①はい  ②いいえ5お茶や汁物等でむせることがありますか①はい  ②いいえ体重変化66カ月間で2〜3kg以上の体重減少がありましたか①はい  ②いいえ運動・転倒7以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか①はい  ②いいえ8この1年間に転んだことがありますか①はい  ②いいえ9ウオーキング等の運動を週に1回以上していますか①はい  ②いいえ認知機能10周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか①はい  ②いいえ11今日が何月何日かわからないときがありますか①はい  ②いいえ喫煙12あなたはたばこを吸いますか①吸っている  ②吸っていない  ③やめた社会参加13週に1回以上は外出していますか①はい  ②いいえ14ふだんから家族や友人と付き合いがありますか①はい  ②いいえソーシャルサポート15体調が悪いときに,身近に相談できる人がいますか①はい  ②いいえ2755高齢者のヘルスプロモーション事例を通して具体的にイメージ

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