nursingraphicus2021
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79サンプルページアニメーション・動画新生児の肝臓の位置乳幼児は,肝臓が他の胸腹部臓器に比べ,比率的に大きく,横隔膜を下方から圧迫している.さらに,成人に比べて胸郭の拡張も不良であり,浅く速い呼吸で換気を行い,呼吸予備力が小さい.そのために呼吸機能不全に陥りやすい.肝臓➡発熱については,3章2節1項p.195参照.すく,その理由として,①体温調節機能が未熟である,②体表面積に対して汗腺の発育が未熟である,③筋肉・皮下脂肪が薄く,それに対して体表面積が大きいということが挙げられる.子どもは感染症にも罹患しやすく,発熱することも多い.直腸体温は,腋窩体温より0.5~1.0℃前後高い.(4)睡 眠 新生児の睡眠時間は20~22時間,乳児は11~15時間である.新生児の睡眠パターンは昼夜の区別がなく,睡眠と覚醒を繰り返すが,生後4カ月ごろになると,昼間の覚醒時間が増え,それと同時に夜間の睡眠時間が増える.睡眠は,成長ホルモンの分泌に密接な関連があり,子どもの睡眠時間の確保は成長・発達にとって重要である.(5)腎機能・水分代謝●腎機能● 新生児期や乳児期の腎臓の組織は生下時にほぼ完成しているが,腎機能は未熟で,腎の濃縮力も低く,乳児期の最大濃縮力は成人の2分の1程度である.腎機能は2~3歳ごろに成人機能に達する.新生児・乳児は膀胱の容積が小さく,1日の排尿回数が多い.乳児の排尿回数は1日15~20回,1回の尿量は約20~40mLである.生後6カ月~1歳は,膀胱に尿がたまると刺激が脊髄神経を通って延髄に伝達され,反射的に排尿が生じる.大脳皮質レベルでの尿意の知覚が可能となり,随意的に排尿をコントロールできるようになるのは1歳半前後である.●水分代謝● 子どもの身体の水分が占める割合は,成人に比べて多い.新生児は体重の80%,生後3カ月では体重の70%,成人では体重の60%が水分である(表2.2-3). 乳児の必要水分量は,150mL/kg/日である(表2.2-4).新生児・乳児は水分代謝の回転が早く,発熱・下痢・嘔吐によって水分を喪失した場合や,食欲不振などによって水分摂取が妨げられた場合,容易に脱水状態に陥る.新生児生後3カ月生後1年~成人全体水分量(%)807060  細胞外液(間質液,血漿)403020  細胞内液404040表2.2-3●身体の水分量(体重比)必要水分量(mL/kg/日)不感蒸泄量(mL/kg/日)尿 量(mL/kg/日)乳 児15050~6080~90幼 児1004050学 童803040成 人502030表2.2-4●必要水分量と排泄量水分摂取量子どもは,①発汗や不感蒸泄が多く,②新陳代謝が活発なために多くの水分を必要とするが,③腎機能が未熟で濃縮能が低いため,不足に応じて水分を体内にとどめることが十分にできない.そのため,定期的な水分摂取が極めて重要である.1回の飲水量を乳児の場合は50~100mL,幼児では100~150mL程度とし,こまめな水分補給ができるように,乳児では昼間2回・夜間1回,幼児では午前1回・午後2~3回,計画的に飲水を促すとともに,常に水分摂取ができる環境を整える必要がある.812子どもの成長・発達と看護7本収録!小児の発達と看護小児看護学 ❶ごろに萌出し始め,2歳半~3歳までに計20本生えそろう.乳歯は5~6歳ごろから抜け始め,同時に永久歯が生え始める.永久歯の萌出の時期にも個人差があるが,第一大臼歯が初めに生え始め,第三大臼歯を除いて,12~13歳ごろに計28本生えそろう.第三大臼歯は17~21歳に生えるが,上下4本生えない場合もある.第三大臼歯が生えそろうと,永久歯は計32本となる.(6)骨 部 骨は子どもの発育に伴い,長さ,太さ,密度を増し,身体的成熟度を知る指標の一つである.一般的な骨年齢の判定には,健康な小児について作成された手根骨のX線写真を評価基準として用い,最も類似したものを判定する方法が用いられる(図2.2-2).化骨は出生時は0個であるが,生後2~6カ月に現れ,年齢+0~1個という数になり,12歳ごろに10個が完成する.(7)性の分化 正常な経過をたどる子どもは,出生時すでに性の分化は完了しており,生まれたときから男女の性が決定している.(8)身体各部のつり合い 身長と頭部の割合は,年齢が小さいほど頭部の占める割合が大きい.新生児では4:1,2~4歳では5:1,4~7歳児が6:1,11~15歳が7:1である.(9)身体発育の評価 身長,体重は乳幼児身体発育調査(パーセンタイル曲線)を用いて評価することができるが,各々の測定値を単独で評価するだけでは,身体発育の評価は十分ではない.乳児の身長と体重のバランスの評価にはカウプ指数を用いる.カウプ指数は15~19が標準で,乳児の健康状態や栄養状態を評価するために用いられている.➡カウプ指数については,2章6節1項p.167参照.新生児3カ月6カ月1歳7歳9歳10歳12歳13歳14歳19歳2歳3歳4歳5歳6歳1.5歳図2.2-2●手根骨X線写真の模式図成人の手根骨784312561.有鉤骨2.有頭骨3.小菱形骨4.大菱形骨5.豆状骨6.三角骨7.月状骨8.舟状骨子どもの手根骨の残り二つは尺骨・橈骨の骨端となる.792子どもの成長・発達と看護(4)ケアプランと実施および評価看護上の問題: #1心不全の増強や短絡閉塞による低酸素発作など,生命の危機状態にある.期待される結果: Aちゃんの生命の安全を保証し,来週の心臓カテーテル検査および手術を受けることができる.看護目標: 心負荷を最小限とし,異常の早期発見に努めながら全身管理を行っていく.ケア計画結 果評 価修 正O-P)1.循環管理①短絡部の雑音の変化②心拍数・不整脈の有無・血圧/動脈圧のモニタリング・心電図波形③利尿や発汗の状況④水分バランスのチェック⑤肝腫の大きさ⑥心拡大の有無(胸部X線検査など)心拍数は安静時140~150回/分で経過,啼泣などにより容易に180台へ上昇する.その際,不整脈の出現はないが落ち着いた後,心室性期外収縮(PVC)の散発と同時に血圧低下を認めたが,自然にPVC消失,血圧上昇することができた.血圧80台/40台mmHg,利尿1.5~2弱mL/kg/時,肝腫は2cm→3~4cmと増大を認めた.心胸比は60%とあまり変化はなく,肺うっ血像の増強はなく,心駆出率(EF)は55%で経過する.全身じっとりした発汗は続いている.Aちゃんは強心薬や利尿薬の使用,水分制限によって心不全の著明な増強はないが,心負荷後の一過性の不整脈出現や肝臓の増大を認めていることから,心不全症状が軽減しているとはいえない.よって,異常の早期発見に努めた観察が必要である.O-P)1-③(医師との話し合いの結果)正確な尿量を計測する目的でバルーン挿入し1時間ごとのカウントを開始する.また,水分バランスのオーバー時,その都度,医師と相談する.O-P)1-①来週のカテーテル準備として抗凝固の内服が点滴へ変更となる.よって,短絡の閉塞,逆に抗凝固の効き過ぎによる出血予防の観察項目を追加する.2.呼吸管理①呼吸数のベース②呼吸様式(陥没呼吸・努力呼吸・鼻翼呼吸など)③呼吸音の左右差④血液ガスデータの変化呼吸数50~60台/分,やや陥没呼吸を呈している.術後と比較してベースの著明な上昇はないが啼泣などの負荷後,鼻翼呼吸が出現する.呼吸音の左右差なく,ラ音の聴取は認めない.データは時々-3前後のアシドーシス傾向ではある.負荷後に努力呼吸が強くなるため,負荷を回避する必要がある.アシドーシスの早期発見のためデータなどの変化を経時的に観察する必要がある.O-P)2-①呼吸が楽にできるように適宜,肩枕を使用する.呼吸状態の回数・様式をX線像や血液データとも比較して,異常時,医師に報告する.3.輸液管理①観察ポイントのチェック②血液データの確認(栄養・強心薬のシリンジ交換時,時々血圧の低下を認めた.Aちゃんは発汗が著明なため,点滴固定を適宜シリンジ交換時の血圧低下を回避する必要がある.また,輸液を安全かつ確実にO-P)3-①強心薬のシリンジ交換時は特に血圧の変動に注意する.ま4健康障害をもつ子ども・家族への看護過程の展開具体的な看護過程を掲載成長と発達を詳しく解説p.81p.79p.317※視聴方法は16ページをご覧ください

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