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83サンプルページアニメーション・動画[疫学] ファロー四徴症は心室中隔欠損,肺動脈狭窄,大動脈騎き乗じょう,右心室肥大の四つの特徴を有する先天性心疾患である.先天性心疾患のうち,3〜6%の頻度といわれている.(1)発症機序 心室中隔の大動脈側の部分(漏斗部)が右心室側に偏位することで,大動脈が心室中隔にまたがるように存在する大動脈騎乗と,大きな心室中隔欠損,および肺動脈弁下(右室流出路)の狭窄が生じる.さらに右心室に負荷がかかるため,右心室壁の肥厚が生じる(図7.5-1).(2)分類 肺動脈弁下狭窄のみならず,肺動脈弁性狭窄を50%で合併する.肺動脈狭窄の程度で重症度が変わる.右側大動脈弓を25%に合併する.5ファロー四徴症(tetralogyofFallot:TOF)1疾病の概念右側大動脈弓本来,脊柱の左側へ弧を描く大動脈弓が脊柱の右側へ向けて弧を描く先天異常.上大静脈大動脈弓左肺動脈左心室左心房僧帽弁大動脈弁下大静脈右心室心筋右心房右肺静脈右肺動脈左肺静脈三尖弁肺動脈弁左肺動脈大動脈弓左心室左心房上大静脈下大静脈右心房右肺静脈右肺動脈左肺静脈右心室肺動脈狭窄(弁狭窄,漏斗部狭窄)正 常ファロー四徴症大動脈騎乗心室中隔欠損右心室肥大図7.5-1●ファロー四徴症の模式図1)豊島勝昭.未熟児動脈管開存症.こどもケア.2011,6(4),p.14-21.2)小山耕太郎.動脈管開存症(PDA).こどもケア.2014,9(3),p.28-32.3)豊島勝昭.“未熟児動脈管開存症”.小児の治療指針.小児科診療.2014,(77)増刊,p.931-933.引用・参考文献4早産低体重児インドメタシン動脈管結紮術重要用語●ファロー四徴症の血行動態〈アニメーション〉tetralogy of Fallottetralogy of Fallot154粘膜下口蓋裂明らかな口蓋裂はないが鼻咽腔閉鎖機能不全をきたす疾患として粘膜下口蓋裂が知られている.症状はCalnanの三徴(口蓋垂裂,軟口蓋正中の菲薄化,硬口蓋後端の亀裂)であるが,診断の確定は比較的難しく,専門家の診察が必要である.(2)診 断 外表面の診察,および口腔内の診察により診断が確定する.(3)治 療 他に合併異常のない疾患群では治療を行うことで健常児と同様の成長を期待できる. 生後は,口蓋裂による哺乳障害に対して,口蓋裂専用乳首,哺乳瓶を使用する.あるいは口蓋床を併用する場合もある(施設により異なる).部位により手術の至適時期は異なり,生後3カ月から半年程度で口唇裂手術を,1歳から1歳半の間に口蓋裂手術を行う.同時に滲出性中耳炎に対して鼓膜チューブ留置手術となる場合もある.就学前には矯正歯科医,言語聴覚士による診察を受ける.7歳から9歳頃,犬歯萌出前の時期に顎裂部に対して,海綿骨移植手術を行う.その後も歯科矯正治療を継続する.顔面成長終了後,最終修正手術等を行う.全ての時期を通じて,複数科のスタッフが連携をとりながら治療を進めるチームアプローチが重要である. 出生前診断されている場合は,家族の不安を解消するよう,適切な情報提供が重要である.出生後も同様に,家族のサポートが重要となる.口唇裂,口蓋裂手術の術後は,出血や腫脹により気道閉塞(窒息)する可能性があるので,十分に気を付ける.術後は経口摂取が不良となるため,経管栄養や補液による水分補給が行われるが,その場合,胃管の誤挿入や,補液の血管外漏出に注意が必要である.創部安静のため,創部を直接触らないように肘を伸展する抑制帯装具を装着することも多い.顎裂手術鼻咽腔閉鎖不全による 異常構音口蓋裂の術後であっても,鼻咽腔閉鎖不全が残り,開鼻声,異常構音をきたす場合がある(例えば声門破裂音という短く切ったような構音.「サカナ」→「アッアッナ」「タイコ」→「アイオッ」のように聞こえる).治療は言語聴覚士による構音訓練,パラタルリフトと呼ばれる口腔内装置などによる保存的治療や,咽頭弁手術(咽頭後壁と軟口蓋を一部連続させる)などの手術治療を行う.3ナーシングチェックポイント図12.16-2●口唇口蓋裂d.軟口蓋裂c.硬軟口蓋裂a.右唇顎口蓋裂b.両側唇顎口蓋裂27312外科疾患厳選された疾患をわかりやすい図を交じえて解説6本収録!小児の疾患と看護小児看護学 ❸[疫 学] 鼻涙管尾側の開口部が先天的に下鼻道に開放されていない状態で,生下時からの流涙や眼脂(めやに)が主症状になる.出生直後は70%が閉塞しているが,その後自然開口して,生後1カ月の新生児では6〜20%に認める.生後3カ月までに60%が,生後12カ月で90%が自然治癒する.また,生後6カ月で閉塞を認める場合,12カ月では75%に,生後9カ月で閉塞を認める場合,12カ月では36%に自然治癒が期待できるという報告がある.ただし,徐々に自然治癒の可能性は低下する.(1)発症機序(図13.6-1) 先天的に,骨性鼻涙管の骨壁の肥厚,鼻涙管の下部開口部における膜性閉塞がある場合に起こる.(2)病態変化 先天的な鼻涙管の閉塞により流涙や眼脂がみられるが(図13.6-2),多くは自然治癒する.6先天性鼻涙管閉塞(congenitalnasolacrimalductobstruction)1疾病の概念図13.6-2●先天性鼻涙管閉塞眼脂は認めるが結膜充血は認めていない.図13.6-1●涙腺と涙器涙腺涙点涙小管鼻涙管中鼻道下鼻道涙囊瞼板の中のマイボーム腺涙腺より分泌された涙液やマイボーム腺などから分泌された粘液は,通常,上下涙点から鼻涙管に流れ込み,下鼻道に流出するが,鼻涙管下部の鼻腔への開口部が先天的に閉じている先天性鼻涙管閉塞では逆流が起きて涙眼となる.28913眼疾患p.273第11章●神経・筋・精神疾患てんかん/熱性けいれん/脳性麻痺/急性脳症/脳炎/インフルエンザ脳症/筋ジストロフィー/自閉スペクトラム症/神経性やせ症第12章●外科疾患先天性横隔膜ヘルニア/先天性食道閉鎖症/肥厚性幽門狭窄症/腸閉鎖症/鎖肛(直腸肛門奇形)/臍帯ヘルニア/腹壁破裂/ヒルシュスプルング病/鼠径ヘルニア/二分脊椎/髄膜瘤/水頭症/上腕骨顆上骨折/単純性股関節炎/ペルテス病/先天性内反足/先天性股関節脱臼/口唇口蓋裂第13章●眼疾患斜視(内斜視・外斜視)/弱視/結膜炎/先天性眼瞼下垂/睫毛内反/先天性鼻涙管閉塞臨床所見を示す写真・図表が豊富※視聴方法は16ページをご覧くださいかざして見る!

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